4人の幼き戦士

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一方、こちらはドイツ。

アダム=バーンズは空港に着くと、執事が迎えに来てるのを目にすると立ち止まる。

「ああ、空港から連絡があったのか」

「バーンズ様。お帰りなさいませ」

バーンズは執事の肩を叩き、何かを呟いてやる。

それを聞いた執事は、思わずバーンズを抱きしめていた。

執事の目からは、涙が溢れ出ていた。

「滅相も無い、有難きお言葉を頂き嬉しゅうございます」

そう言いたかったのだが、何も言えなかった。

ただ、バーンズの名前を繰り返していた。

「アダム……、アダム……。お帰り、アダム……」

 

アダム=バーンズは屋敷に着くと、真っ先に自分の家に向かった。

執事の声が止めようとする。

「バーンズ様。先に御両親ですっ」

「煩いっ」

 

自分の家の門を潜ると、バーンズは大声を出しながら、ある部屋へと向かう。

「マリアッ! マリアッ!」

 

その声が聞こえたのか、マリアの御付きの女中が薄く扉を開ける。

その隙間に、バーンズは声を掛ける。

「マリアッ!」

「お静かにっ! 何方様ですか?」

だが、バーンズはその女中をスルーして、奥に向かって声を響かせた。

「マリアッ! 私だ、バーンズだ! 生きてるか?」

 

女中は驚いて目を見開いてる。

「え……、バーン、ズ、様?」

 

ドタドタドタッ……と、こちらに向かってるのか音がする。

1人の女性が泣きはらした顔で、バーンズの顔を覗く。

「バー、バーンズ? バーンズッ、お帰りなさいっ」

マリアはバーンズに抱き付いてくる。

マリアを抱きしめながら、バーンズは口を開く。

「マリア……、ごめん、ごめん。心配させて、本当にごめん」

「帰って来てくれて嬉しい……」

「マリア。忘れた事は無かったよ」

「バーン……」

「ただいま、マリア」

アダム=バーンズはマリアを抱きしめ、その場でキスをした。

 

久しぶりに会う子ども達は母親似になっていた。

長女マドリーヌは11歳、次女ナンシーは10歳、三女クララは6歳になっており、3人共が母親マリアそっくりの美人になっていた。息子のマルク8歳は明るく笑顔を振りまいている。

 

アダム=バーンズは4人の子供と暮らしながら、イタリアに連絡をしていた。

自分達の脱退が成功したのはイタリア王妃の協力もあったからだ。

それに、他の隊員達も自分達の家族の元へ帰りたいという気持ちも知ってたからだ。

 

皆はグズがイタリア王妃の子供であることは知らない。

知ってるのは、あの場に居た私達3人だけだ。

他の皆が知ってるのは、グズはイタリア人であり『殺人魔ダーク』という異名を持っている、という事だけだ。

 

何処で戦いをするのか、大体の予測は付いていた。

その場所で待っていたのだ。

必ず来るのは知っていた。

だから、その時に知らせたのだ。

相手との交渉はバーンズがしていた。

 

その交渉内容は、二つだ。

無益な殺生はしない。

ドイツのフォン・パトリッシュとリンクを繋げて欲しい。

そういう簡単明瞭な言葉だった。

バーンズがドイツの名家の嫡男だという事は、顔を見れば分かる。

相手側はバーンズの事を知っているので、自分達にも利は有り、相手にとっても不足は無い。

そういう判断をして、交渉は成立していった。

 

それは、書面におこしての正式な契約だ。

 

そして、皆が皆、それぞれの国に、屋敷に、家に戻りたいが為に、自分達の実家の連絡先をアダム=バーンズに教えていた。

それは密かに、何度も何度も行われていた。

段々と、1人が3人に、そして、子ども隊全員になったり。

大人隊も1人が3人になったりして、イタリアには誰一人として戻る事も無かった時があった。

 

その時は、誰もが期待を抱いた。

今度は誰の番になるのか。

 

その内、戦場に赴いた先から誰も戻ってこないという報告を何度も受け、不審に思ったイタリア王は、後を尾けていた。

だが、気が付いた時は遅かった。

ドイツを中心に、スイス、フランス、アメリカ、オーストリア、地中海に沿海州、ポルトガル、中国等々の連中に囲まれてしまっていた。

王を守る筈の衛兵は両手を上げて降参の意を示したが、反対に王に殺されてしまった。

そして、王にくっ付いて来ていた残りの隊員は、王に手傷を負わせた状態で、そのまま放っておいた。

そして彼等は自分達の国や家に戻ると、ドイツのフォン=パトリッシュと手を結び、後の医療界における絶大な力を持つ財閥へとなっていったのだ。

 

その当時は、侯爵だったフォン=パトリッシュ家を、アダム=バーンズは次々とあの隊から脱退してきた者達と手を組んで、多くの国や名家達と同盟を結んで組織化させていった。

そして、自ら『御』と名乗り侯爵から抜け出すと、世界へ通じる組織へ、財閥へと成長させたのだった。

なにしろ、あの隊では、多国籍の人間ばかり居たのだから。

 

プライベートな面では、4人の子供達が結婚して、バーンズには次々と孫が生まれた。

日独のハーフのリョーイチを筆頭に、キョージ、ヒロト、アンソニー、ニールの5人だ。

それぞれ1人っ子だが、幼少時はドイツの屋敷で過ごして貰う事にした。

なにしろ、ドイツと日本は遠いからだ。

一番喜んだのは、息子であるマルクだ。

女ばかりの姉妹に囲まれて育っていたので、男兄弟が出来たみたいな感じを受けたらしい。

中でも、お気に入りは長女マドリーヌの1人息子であるヒロトだ。

気は小さいが優しく、音楽を愛してバイオリンを好んでよく奏でてくれていた。

誰かと言い合う事も嫌がり、よくマルクの背に隠れていたものだ。

 

私もそうだが、屋敷の者も、ヒロトの演奏を聴くと癒されていた。

その内、ヒロトは同じ音楽を愛するエドワールと一緒に居る事が多くなってきた。

エドワールは、私の年の離れた従弟だ。

エドのバスと、ヒロのバイオリン。

2人で、よくデュエットをしてくれたものだ。

 

リョーイチは理知的で、頭の良い孫だ。

マルクとは、年の離れた兄弟と言っても過言では無いほどの相手だ。

お互いがヒロトを可愛がり、マルクも一緒に同じ部屋で寝ていた時も一時期あった。

 

キョージは、リョーイチの母とアンソニーの父の間に生まれた子だ。

それでも、同じ孫だ。

天パで朗らかなキョージは、リョーイチを兄として慕っている。

だが、リョーイチは日本で生まれたので日本人だが、キョージはドイツ人だ。

 

アンソニーは、シンガポールのマフィア・ドンになったホワンとの間に生まれた孫だ。

だけど、ドイツで生まれた為ドイツ人という国籍だ。

恐らく、アンソニーはホワンの跡を継ぐだろう。

 

ニールは、マルクの子供だ。

マルクは自分はイギリスで生まれたのでドイツ人という拘りを持っているのか、ドイツ人の子供を持ちたがっていた。

ニールは、おっとりとして喧嘩を好まない孫だ。