出会うから別れがあるんだ

通常で行くと2日掛かるが、木々を伝い最短距離で行くと1日でマルク様の私有地に着いた。

どんな感じの人なのか、また人数の事も聞かずに来たから分からないが、取り敢えず誰か居ないか探すか。

 

イタリア側から探す事2日目に、ある人物を見つけた。

その人は川の中に頭を突っ込んで何かを探しているみたいだ。

顔を上げた時に声を掛けた。

「ミスター、そこで何をしているのですか?」

 

だけど何の反応も無かった。

英語が分からないのか、ドイツ語、フランス語でも声を掛けてやるが、中国語で声掛けた時に反応した。

「ある人を探している」

 

この人は中国人なのか。

いや、それでも銀髪に目付きの鋭いダークブルーの瞳は欧州人を思わせる。しかも筋肉が付いてるのでスポーツマンなのかなと思うほどだ。

中国語で返されたので中国語で話し掛けてやる。

 

その人の名前はアール。

詳しい事は教えてくれなかったが、おそらくこの人が侵入者なのだろう。

ここは、ある人の私有地で侵入者を連れて来る様に言われてると言うと焦り出した。

「探し人が見つかれば、その人を連れて帰る」

「でもね、ここは私有地なんだ」

「悪いが」

「主人が連れて来いと言ってるんだ。まあ、取り敢えず君の怪我の具合を見てからだね」

失礼、と言って服を脱がせた。

 

思わず口笛を吹いていた。

「凄い筋肉だね。君は何かスポーツしてるの?」

 

アールは黙っている。

「何か言わないと意地悪するよ」

「スポーツ全般……」

「へえ、身体を動かすのが好きなんだね。アールは何のスポーツが一番好き?」

「アウチッ」

「ごめん、塗り過ぎた。……ん、英語も分かるの?」

 

アールは溜息を吐くと、こう返してきた。

「ドイツ語、フランス語も分かる」

「へえ、オールマイティなんだねえ。凄いや」

 

アールは水が好きみたいだ。

怪我の様子を見てOKと言った私の呟きを聞くと、パパパッと服を脱いで全裸になり川の中に潜ろうとしている。

「ちょ、待って。駄目だよ。怪我してるんだ、水に入っちゃ駄目っ」

 

川から引き揚げると、アールはキョトンとしている。

その表情がジョンに似ていて思わず微笑んでいた。

「その怪我が治ってからね」

 

その怪我が治るまで1週間を要した。

その1週間という短期間で興味を引かれた。

似ていてもジョンとは違う。

あのふんわりとした泣き虫ジョンは可愛いけど、アールは危険な男という匂いをさせている。

そのアールが文武共に秀でている事が分かり、怪我が治るまで一緒に居た。

怪我が治り傷跡も消えた日、言っていた。

「アール、君を主人に会わせたい」

「勝手に入ったのは謝るよ」

「たぶん、それだけでは済まされないと思う」

「どうして?」

「主人はキレるから」

「叩くのか?」

「鞭で打ってくるんだ」

「なる。ドイツ人か」

「頼むからアールも喧嘩しないでね」

「努力する」

 

アールを連れてドイツに戻るのだが、アールは木登りは苦手みたいだ。

ドイツを発って戻るまでに10日間掛かった事になった。

何か言われるだろうか、言われるだろうな。

覚悟していた。

 

部屋のドアをノックする。

「マルク様、ただいま戻って参りました」

「遅いな」

「申し訳ありません」

 

そう返すと、アールを部屋内に入れ、後ろ手でドアを閉めた。