甥っ子コンプレックス

10

付けなくても良いと言ったのに、無理矢理付けてくれたセキュリティビデオを見る。

先日の24時前に時間を戻し、そこから見ていく。

ヒロは泣きそうな表情をしているが泣いてない。

それに朝まで寝ていたみたいだ。

 

服を脱ぎ出している。

服を脱いでどうするのだろうと思ってたら、先程の掠り傷を思い出した。

あの傷から血が出ていたらしく、服で止血している。

その少量の血でもド―ベルマンは嗅ぎつける。すぐ近くに居たド―ベルマンは威嚇気味にしているが、他は何もしない。これは、どういう事だ。

ヒロは震えているのか、声もか細い。

「や……、あっち行って。ふ、ぅ……、マルク」

その1匹が近付いて来る直前、とっさに段違いのハリに掴まり飛び上がる。その1匹は壁に激突してしまい、大量の血を吹き出した。

 

その後は、お決まりの様に残りの49匹に食われていた。

ヒロは目を瞑って祈りのポーズを取っている。

そんなに時間を置かずに、49匹は定位置に戻った。

ヒロは気を失ったみたいでハリの上から落ちていくが、瞬時に5匹の尾が宙に舞い、ヒロを器用にドアの前に置いてくれた。

壁ではなく、ドアの前だと。

ああ、だから私がドアを開けようとしても開かなかったのは、そういう事だったからなのか。

そのせいでドアが開かなかったんだな。

お仕置きになったのかどうなのか、まあ、取り敢えず無事で良かった。

ヒロが目を覚ましたのは昼も過ぎ、夕方も16時を過ぎていた。

「ん、ここは……」

「目が覚めたか」

「マル」

「急に動かない方が良いぞ」

「あの、ごめんなさい。もう、出歩きません。だから、だから」

「私も大人げなかった。怖い思いをさせてしまって、ごめん」

しきりに「ごめんなさい」と呟くヒロが可哀相で抱きしめてやる。

「マルク?」

「泣かないで。私も、やり過ぎてしまって反省してるんだ。ヒロが、今後は自分勝手に外出しないと約束してくれれば良いんだ。ごめん、私も頭に血が上っていた……」

 

ヒロは手を伸ばしてくると、私の頬に唇を押し付けてきた。

「ごめんなさい。もう、勝手に行きません。だから許して……」

その表情と声に、私は気が付いた。

お姉様、私はヒロが可愛い。親愛なる人はお姉様だが、私にとってヒロは大事な人だ。約束するよ。絶対にヒロを泣かせる様な事はしない、と。

そのヒロを抱き上げ書斎のソファに連れて行き、テーブルの上に置いてるバスケットを見せる。

「ヒロ、お腹空いただろ。サンドイッチを作って貰ってる。夕食まで2時間しかないが、少しでも食べると良い」

「多過ぎ……」

「私も、そう思ってるよ。でも」

ヒロに言われてしまった。

「マルクの方が僕よりも身体が大きいから、沢山食べてね」

どうしよう。

ヒロは食べないと背が伸びないよと言いたかったのに、と思いながら心の中で溜息を吐いた。

「んー……、一緒に食べるか」

その後、2人とも夕食は食べなかった。

仕方ないだろう。ヒロと2人だけで大量のサンドイッチを食べきったのだから。

そのヒロはメインディッシュは食べずに、ドルチェだけをしっかりと食べていた。

ドルチェのメニューはイチゴのショートケーキ、人形が乗っているチョコケーキ、マロンの実が沢山入ってるマロングラッセ、ヨーグルトムース、飲物は果物ジュースにリンゴ酒。

不思議だ。

その量は、あの小さいお腹のどこに入るのだろう。

私はメインディッシュはサラダだけにして、レモンティーを飲んでるのに。