甥っ子コンプレックス

26

ヒロが戻ってくるまでの数ヶ月間、こちらドイツも変わっていた。

やっと、あの男が死んだのだ。

毒とナイフと銃。

この3つを以って、やっとだ。

 

私の父は『御』の部屋に居る人だけだ。

他の男は要らない。

そしてシェリーも亡くなった。

あの2人がシェリーを殺した。

絶対に許さない。

私の最も親愛するお姉様だけでなく、ヒロを侮辱した挙句にシェリーをも殺した。

ニールが無事だったのが唯一の救いだ。

二度と結婚しない。

私の妻はシェリーだけだ。

ヘル・グスタフォーに連絡すると、こう返してきた。

「こんな可愛い子どもを残して。マルク様、私は再婚する気ありません。だけどマルク様は、まだお若い。これからも良縁がくると思います。その時は、ご結婚して下さい」

「ヘル……、いや、お義父さん。私の妻はシェリーだけだ。再婚する気なんてない」

「マルク様。私は、あのパトリッシュの2人を許さない。貴方と同じパトリッシュでも、あの2人は違う。欲にまみれたパトリッシュ。制裁を希望します」

「それは私も同じだ。だけど、東が居なくなると守りは南だけになる。そこが痛いんだ」

「それでしたら区域を無くしませんか?」

「無くすとは」

ニヤリと妖しい笑みを見せたヘル・グスタフォーは言ってくる。

「妙案を思い付きました」

「どんな事だ?」

きっぱりと言ってきた。

「最後の狩猟をする」

 

説明はこうだった。

「皆して最後の最後で狩猟をするんです。どさくさに紛れて獣ではなく、人間を狩る輩もいる事でしょう」

「守りの言葉とは思えないな」

「一掃すれば良いのです。そしたら私はニールと一緒に2人で暮らします」

「ニールは私の子だ」

「分かってます。でも、少しの期間だけでも一緒に居たい。先程、マルク様に”お義父さん”と呼ばれ私は嬉しかった。今度はニールに”お爺ちゃん”と呼ばれたい。この老いぼれの頼み、叶えてくれませんか?」

「良い事を思い付いた」

「何でしょう」

「ここでニールと暮らせばいい」

「ここって、このフォン・パトリッシュの敷地内でですか?」

「そうだ」

「そんな、きっぱりと」

 

きっぱりと言いのけてやる。

「ニールと一緒に暮らせ。私も参謀役を失わずに済む」

「マルク様、まだ私を必要とされて……」

「それに職を失う事も無い。一石三鳥だよ。どうかな?」

「あ、ありがとうございます」

 

そして、狩猟仲間の皆に通知を送った。

そんな矢先、ヒロが戻ってきた。

「5年間、宜しくお願いします」

ヒロの顔つきは変わっていた。

 

そして、2回目の海外2人旅【ポルトガル&スペイン】行きを実行した。

まずはポルトガル。

ユーラシア大陸の最南端にある国家であり、大航海時代の先駆者となった国だ。

ヒロは船に乗りたがっていたので乗せたら、小さいながらでも海の男だという顔をしている。なので、側付2人を付けて、一緒に航海へと旅だった。

と言っても半日だけの経験だったが。それでも気持ちは違うものだ。

気に入ったのか、ヒロは1ヶ月間滞在して、クルーザーの資格を取ったほどだ。その間、私も一緒に資格を取り、クルーザーを買った。

大きな買い物をしたせいで、スペインに行けるかどうか不安だったが、ヒロは行くと言い切ったので、スペインへとクルーザーで向かった。

 

スペインでヒロ名義の別荘を買い、そこにクルーザーを横付ける。

私名義でも良かったのだけど、自分名義にしたのは”自分の物が欲しかった”という事らしい。

その別荘を中心に、色々な所を見て回った。

ホテル等の手配をしなくて済むし、初期投資だけすればいいので別荘買いをし出した。

スペインはヒロ名義だけど、私名義でもう1軒。ついでとして、フランスのトゥールーズで私名義のを1軒、買った。

そのスペインの別荘で、ヒロはシェフとメイドを雇った。

短期間だったが、割りの良いバイトだったらしい。

シェフとメイドたちは笑顔で私たちを見送ってくれた。

「また、こちらに来られる時は声を掛けて下さい。その時も、お世話させてもらいます」

「御無事で、お帰り下さい」

彼等のバイト料はヒロではなく私のお金を出したのに、ヒロは御機嫌だ。

「その時はよろしくね」と、にこやかに応じている。

 

まあ、ヒロが良いのなら私は良いよ。