甥っ子コンプレックス

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ヒロと一緒にランチを食べにビュッフェへと足を向ける。

もう少しで着くという時にポケットに突っ込んでいた電話が鳴った。

相手はモーガンだった。

最終打ち合わせの確認をした後、ヒロが居る事を言うと、代わって欲しいと言われヒロに電話を渡したら、モーガンは言い含めてくれたらしい。

ヒロも一緒に北欧の病院へ行く事になった。

ヒロは、ランチのメインにオムライスとフレッシュサラダを選び食べ終わると、ドルチェにシフォンケーキ、チーズケーキ、イチゴケーキ、アップルパイとホットティを選んで、ホクホク顔しながら食べている。

ヒロの前に並んでるケーキを見て、思わず苦笑していた。

私はヒロの食べっぷりを見てるだけでお腹がいっぱいになったが、ホットティーだけでもと思い、それを頼み飲んでいた。

「よく食べる奴だな。で、結局来るんだろ?」

「だって、モーガンから直に言われると断われない」

「私が言うとナインって断るくせに」

「ごめん、ごめん」

そして、予定より早めに仕事が終わった。

まだ10日ほどあるので4回目の男2人旅として【北欧】旅行を駆け足で楽しんだものだった。

ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド。

ノルウェーでは仕事をしていたのもあり、オスロの美術館巡りをしただけで、海沿いにロフォーデン諸島経由してフィンランドに向かった。

ヒロが一度は行ってみたかったんだと言っていた場所、シベリウス公園を見に行く。

 

その次に向かったのは、ロバニエミ。

ヒロ曰く「サンタクロースが年中居るんだ。サンタクロースと一緒に遊べるよ」と目をキラキラと輝かせていた。まったく、少年みたいな事を言う奴だよな。

そして、スウェーデンにあるストックホルム。

有名場所としてノーベル賞の晩餐会が開かれる市庁舎に行く。煌びやかでいて華やかなイメージがあったが、まさに、その通りだった。

そして、ドイツと隣接する国、デンマーク。

コペンハーゲンにあるチボリ公園。

ヒロは童心に戻ったみたいで、公園の中に入って行く。

そして、オーデンセ。ここは私が一度は行って見たかった場所だ。

アンデルセンの故郷であり、北欧の神であるオーディンから名付けられた地名だ。

10日間だと、こんなものだろう。ましてや、北欧は広いからな。

側付も居なければ馬も無い。

でも、楽しかった。

ヒロなんて、子どもの様な表情をしていた。

帰りは、オーデンセのある島からユトランド半島へと渡り、そのまま下ってきた。

 

その下る途中に、私は自分の病院に寄った。

ヒロは、そのまま本宅に戻ると言ってたので、病院の近くまで一緒に行き、その場で別れた。2時間もしないうちに、執事のフランツから連絡を貰った。

「ヒロが目を覚まさない」

 

寝てるだけではないのか。

それに、私は仕事中だ。

だから指示を出して、夜は主治医を連れて帰ってきた。

その主治医は「寝てるだけ」と判断を下した。

見れば分かる。

だけど、数日経っても目を覚まさないので痺れを切らし、もう一度診て貰った。

「寝てるだけです」

「一体、いつになると目を覚ますんだ」

「それは、分かりかねます……」

 

そんな言葉が聞きたいのではない。

だから自分で判断した。

こんなんだと体調を崩す。

それに、こんな事でヒロを失いたくない。

点滴で水分補給して、とにかく目を覚まして貰わないと困るので執事であるフランツに指示を出す。

「フランツ。他はしなくて良いから、ヒロの世話をしてくれ」

「はい、畏まりました」