「マーク。こっちを向け」
「なに、レイ?」
ボキッ!!
ガタタタッ……。
「いきなり何するんだよっ」
「それは、こっちの台詞だ。お前、ジョンに何やった?」
「え? ジョンにって」
「ジョンは私の恋人だ。そのジョンを寝取った奴を許すほど、私は寛大ではないぞ!」
玄関ポーチで兄弟喧嘩が始まった。
休憩を取っていたフィルとウィルは、レイが人を殴ってる所を見るのは初めてだった。
「あのクールだった室長が……、熱い」と、フィルが。
「レイが、あんなにもなるだなんて……」と、ウィルが。
今まで、こんなことは無かった。
長兄や次男から喧嘩を吹っかけられたことはあっても、三男の兄からは甘やかされてきた。
「ごめんなさい」
と、そう言えば許してくれていたのだ。
だから、手も足も出せないでいたのだ。
20分後……。
自分には絶対に喧嘩を吹っ掛けてこない三男の兄に手が出せないでいる末っ子の弟は、ボロ雑巾みたいにボロボロになっていた。
兄はスッキリ顔で部屋に戻っていった。
その様子を見ていたフィルとウィルは、マークが可哀想になり手当をしてやる。
2人は心の中では同じ事を思っていただろう。
思わず声が出ていた。
「ジョンが絡むと、こんなになるんだね」
「初めて見た」
と、レイの力を思い知ったのだった。