4人の幼き戦士

10

私は王子なんだ。

イタリア王妃の子供なんだ。

その王子に、あんな事を……。

許さない。

私を誰だと思っている?

私は正真正銘の、イタリア王子だっ!

 

パチッと、目が開く。

目が覚めると、ウォルターの姿が視界に入ってくる。

「気が付いたか? お前さん、疲労でぶっ倒れたんだよ。おまけにバーンズに殴られたし。腹空いただろ。ほら、食え」

そう言って、オムライスを乗せた皿を渡してくれる。

「ありがと」

「どいたしまして」

 

グズが食べきったのを見計らって、ウォルターは声を掛けてきた。

「しかし、見事なナイフ捌きだったんだな」

何の事かは分かってる。

昨夜の事だ。

黙ってると、ウォルターはグズの頭を優しくポンポンと叩いてくれる。

「別に怒ってんじゃないぜ。大した腕だなと思ってね。グズってさ、もしかしたら、この国の誰かに何かをしてぶち込まれたのか?」

「違う」

「そっか、違うのかぁ。あー、でも昨夜のグズのナイフ捌き、見たかったな」

 

そのウォルターに、グズは話した。

この隊にぶち込まれた経緯を。

大事なフルートを取り上げられ、取り返そうとして、その男の腕にしがみ付いて宮殿の中まで入った事。

そして、目の前でフルートを割られた事を。

 

ウォルターは目をパチクリさせている。

「え、宮殿って……。お前、国王に歯向かったのか?」

「フルートはお父様から貰ったから。それを、それを、あの男が……」

「お前さー……、そういう時は、はい、どうぞと言って渡せば良かったのに」

「だって、お父様から貰った大事な」

「ああ、分かった。分かったから泣くなよ」

そう言って、ウォルターは抱きしめてくれた。

いつもは意地悪な事を言ってくるのだが、こういう優しい面もあるんだな。

その温もりを感じながら、グズは話し掛ける。

「でも、そのお蔭で皆と出会えたんだ。辛い事もあるけど、バーンズとリンとウォルターに出会えたのは嬉しい」

「そうだな。俺は、何時の間にか連れて来られてたんだ」

 

だが、これだけは言わないといけない。

そう思い、グズは言っていた。

「ウォルター」

 

先程とは口調が違うのを聞き取ったウォルターは、じっと耳を澄ましている。

「何?」

「後2年しか残ってないんだ」

「何が?」

「観光ビザ」

「は? ビザって、お前?」

「私は日本人だ。お母様はイタリア人だけど、お母様にくっ付いて5年間をイタリアで過ごすという予定だったんだ。お父様は日本人だけどね。あのフルートは、お父様から貰った大事な物なんだ」

 

するとリンの声がした。

「ああ、なるほどね。生粋のイタリア人では無いな、と思ってたんだよ。ハーフなんだね」

ウォルターがリンに聞いてる。

「本当に、そう思ってたのか?」

リンはウォルターに話し掛ける。

「ウォルター。世界地図の読み方、知ってる?」

「それ位、知ってらっ」

「日本と中国は、お隣さんだよ」

「それ位、誰でも」

 

今度はグズだ。

「ウォルター。日本は島国だよ。海に囲まれてるんだ。中国は大きな陸地で、色々な人種が沢山住んでいるんだ」

「へー。海を隔てた、お隣さんか」

「私は、約束の5年間はイタリアに居る。だけど、2年後には日本に戻る。何が何でも、お父様の所に帰る」

「グズ……」

「昨夜の奴等は言ってたよ。『恨むのなら国王を恨め』とか、『イタリアが大嫌いなんだ』とか。『今迄の鬱憤を晴らしてやる』とか。なら、国王にしろよ。そう思ったね」

 

バーンズの声が割って入ってくる。

「それでも、全員を殺すのはやり過ぎだ」

「殺らなければ、犯られる……」

「明日には、大人隊がぶち込まれる」

その言葉に驚いた。

リンの声が、真っ先に出ていた。

「え、もう?」

ウォルターも呟きで応じる。

「まあ、隊員はイタリア人ではなく外国人ばかりだからな」

 

バーンズは、そのウォルターを睨んで言ってくる。

「ところで、ウォルター」

「何だ?」

「何時まで、そいつを抱いてるんだ?」

「え、落ち着くまでだけど?」

「見れば分かるだろ。もう落ち着いてるぞ」

「うーん……」

 

何て返そうかと考えてると、バーンズは言ってくる。

「それに、ここは私の房だ」

「はいはい、分かりましたよ。じゃ、な。グズ」

 

リンは笑って言ってくる。

「ウォルター、何を不満気な表情してるの?」

「なあ、バーンズって、もしかしてグズの事……」

「保護者でしょ」

「あー、なるほどね。何となくだけど、納得した」