甥っ子コンプレックス

14

お気に入りの6人を連れてシェリーの家へ馬を走らせる。

門は閉まっているので塀に沿って囲みを歩くと、数本の木が倒れて梯子状態になっている。なるほど、この木を伝って中に入ったのか。

シェリーは自分の家を貧乏貴族と言ってるが、銃が一番の金目の物だ。

自分の手元に置いてるのは護身銃で、主人は出張して修理や手入れをしている。だから誰かのを預かる事も無い。という事は、別邸だな。

最初に別邸に行くか。

森の中に入ると死体が無造作に置かれている。道すがら、人が死んでいる。まるで別邸に案内されているみたいだ。

まさか、その泥棒は別邸の事をも知ってたのか。

別邸のドアが開いている。

意を決して入ろうと思ったが、側付の1人であるフィルが首を横に振る。

この中に居るのか。

フィルは私を押し留め中に入った。

「アロー。ムッシュ、頼みたい物があるのですが」

何の返事も無い。

フィルの声しか聞こえない。

「ムッシュ……」

数分後、フィルは3人の男を後ろ手で縛り、女性を肩に担いで出てきた。

「一体何だ……」

「これはこれは」

「ジュニアが何の用かな」

その言葉で分かった。

「なるほど。泥棒は、この3人か」

 

馬から降りて女性に近付くと、脈拍を取らなくても死んでいるのが分かった。

その3人に「娘が居たはずだが」と声を掛けてやると、順々に返してくる。

「ああ、その娘はどっかへ逃げたぞ」

「本宅から来たみたいだけど、ちょうど、この女をヤッてたからなあ」

「美人だったよなあ、惜しい事をした」

こいつらシェリーの母親を3人で強姦したのか。

シェリーもそうだが、シェリーの母サリーもイギリス人で、私を自分の子同然に可愛がってくれてたものだ。そのサリーを、こんなにして……。

側に居た側付に指示を出す。

「この3人を縛れ」

「はい」

と返事をすると、縛るだけでなく目隠しをさせ猿ぐつわまで噛ませてる。

 

「サリー、シェリーは元気にピンピンしてるよ」

正門から本宅へ入ると、違う3人が縛られている。

なるほど泥棒は6人で二手に分かれて襲ったというわけだ。

「マルク様、何故……」

「ヘル、申し訳ない。私がもっと早く着いていたら」

何かを感じ取ったのだろう。

 

「まさか、あの子は」

「奥方は、こちらに」

「あの子はっ」

 

小声で耳打ちしてやる。

「大丈夫です。私の邸に居ます」

「そう、良かった」

見るからに安堵した表情のヘルに聞く。

「ところでヘル。心当たりは?」

「こいつ等の狙いは、あの子なんだ」

「え?」

「私が縁談を即答で断ったから、こいつ等を送り込んできた」

「縁談?」

「あのじゃじゃ馬に結婚なんて、まだ早い。だから断ったんだ。それが、このザマだ」

 

まさか、あのシェリーに。じゃじゃ馬云々の点は認めるが、その縁談相手は誰なんだ。

「立ち入った事を聞くが、その相手は誰なんだ」

「東の守りの息子」

「カールか」

「そうです。今迄はそぶりも見せなかったのに、何で今頃……」

 

カールは、以前はよくマドリーヌ姉様を追い回していた。結婚して子どもが居てもだ。それに、シェリーは姉様に似ている。そこで気が付いた。カールは美人に目が無いって事に。

「久しぶりにシェリーに会って驚いたんだ。シェリーは美人になったね」

「フランスに3年ですが留学してたんです。数日前、留学先から完全帰国して来た時は、サリーもそうだが私も驚いたものですよ」

「おしとやかになったのかなあ」

「どうだか」

その言葉に2人して笑っていた。

フランスに行ってたのか、なるほどと納得した。