甥っ子コンプレックス

19

その音の方を見ると、シェリーが猟銃を構えている。

「な……」

だが目隠しをされてるカールには見えない。その音だけで反応した。

「マルク、貴様はっ」

だが、マルクは駄目だと言う様に首を横に振っている。

シェリーは、そんなマルクの様子が見えてるのに、見てない振りをしてカールの側頭部に銃口を押し付ける。睨んだまま、カールの側頭部から額に銃口を移す。

まあ、こいつも猟をする人間だ。何処を撃てば良いのか分かってる。

その銃口は額から鼻梁をなぞり頬へ、頬からうなじへ、うなじから鎖骨へ。そして左胸部から右胸部へと移り、右脇腹を経由して腹部へと移る。臍の部分を強く押し込み、そのまま下へと動かしている。

その様子を見て、マルクは(こいつ、もしかして……)と思い当たる。

シェリーの構えた銃口は下半身の付け根に位置するモノ。

そこで止めた。

思わず自分のその部分にあたる部分を手で隠したほどだ。

カールも分かったのだろう。

「ど、何処を……」

 

シェリー、そんな所を狙うなと思いながら、カールに言ってやる。

「5つ数えてやる。逃げるのなら、その5つの間だ」

ゆっくり数えてやる。

1つ、2つ。

 

ギュッと押し付けられる銃口は、そのモノの先端に移っていく。

止めろ、止めてくれっ。頼む、シェリー。

自分の身の危険を感じたのか、カールは相手が言い合っていたマルクなのか、それとも違う誰かなのかが分からないので逃げる事にしたのだろう。

「ごめんなさいっ」

そう言うと後ろに向き逃げだそうとしている。そんなカールにシェリーは容赦しない。

「逃げんなっ」

あれほど会いたいと言っていたのに、その声だけでは分からなかったみたいだ。

シェリーはナイフも持ち出し振りかざす。

 

「そこまでだっ」

シェリーの腕を掴む。

「離せよっ」

「ほら、銃とナイフもこっちに寄越せ」

「やめっ」

「お前に人殺しさせたくないっ」

「やだっ」

「シェリー、お願いだ」

 

ナイフを叩き落としてやる。

「いつっ…」

「シェリー、止めるんだ」

「止めるな。あんの野郎ー」

「シェリーッ」

シェリーを反転させると思いっきり抱きしめてやる。

耳元で囁く様に小声で言ってやる。

「シェリー」

「あいつは……、あいつは……」

「シェリー、目を瞑って」

「あいつは……」

「シェリー」

頬に口付けていた。

「マル……」

「シェリー、大丈夫だから」

そう言うと、シェリーの身体から次第に力が抜けた。そうしてると銃は床に落ちた。ナイフと銃を部屋に蹴り入れ、ベッドに横たわすがシェリーは手を緩めない。私の服を強く強く握ってる。

「シェリー、もう大丈夫だよ」

そう言うとシェリーの首元に顔を埋める。

「あ……」

シェリーの手から、身体から完全に力が抜けた。だが、そのまま顔を埋めただけに留めた。

もしかしてシェリーは……と思ったが、それ以上の事はしなかった。

こんな時にするものではない。

それに、したらしたで、死ぬまでずっと何か言われそうな気がしたからだ。