甥っ子コンプレックス

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初めての旅行。

ヒロと2人だけの海外旅行。だけど、ガードもいないとなるとドイツから離れることが出来ないので、いつもの側付メンバー6人を連れて行く。

まずはイギリスだ。

私はパスポートなんて必要ないけどヒロは必要だ。だから、フォン・パトリッシュの紋が入ってる書類を身に付けさせる。

まずは史跡巡り。

ロンドン塔、チャーチル博物館、ウェストミンスター宮殿、テムズ川をクルーズして再度ロンドンに戻ってくると、今度はスカイ島からネス湖へ、そしてウエストハイランド鉄道に乗る。

ヒロは御機嫌だ。

そんなヒロを見てるだけで、私も心がウキウキとしてくる。

マンチェスター、バーミンガム、ヨーク、ノッティンガム、ケンブリッジを巡りイギリスは3週間ほど滞在して、その後フランスへ行く。

ニース、ボルドー、マルセイユ、パリへと巡ると、次はマドリーヌが2年ほど過ごしていたトゥールーズへも足を向ける。

「マドリーヌは2年間、ここに住んでいたんだ」

「へえ、ここに」

 

トゥールーズは、オレンジ色や赤色の暖色系のレンガが特徴で、別名『バラ色の都市』とも呼ばれており、医療福祉にも力を入れてる地域。

そういえば、ヒロの父親は医者だと言ってたのを思い出す。そうか、医療関係で知り合ったのか。

マドリーヌは、私には何も教えてくれなかった。

それもそうだな、私は教えて欲しいと言わなかったから。これが教えてと言えば、教えてくれただろうか。姉と弟の関係が少しでも身近に感じることが出来ただろうか。

今となっては分からない。

だけど、これだけは確かだ。トゥールーズに住んでいたマドリーヌは、日本男性と出会い子どもを成した。その子は、私に懐いてくれてる。

お姉様。私は、お姉様に言われたからではない。自分の気持ちでヒロを大事にしたいんだ。

これだけは分かって欲しい。

ヒロを大事にしたい。

私に懐いてくれる、この子を可愛いと思っている。

マドリーヌに似てるからではない。

この子が、私を選んでくれてるからだ。

この子にだけは嫌われたくない。

 

サン=ピエール橋とヌフ橋。そしてサン=セルナン大聖堂。他、色々と見てるだけで分かってきた事がある。ここトゥールーズは移籍人が多い。

なかでも北アフリカ出身なのだろうと思われる人が多く、次いでイギリス人にドイツ人。ここでなら、私も浮く事は無かっただろう。ドイツは、ガッシリ系の人間が多い。

マドリーヌもそうだが、私もガッシリとは言い難い体型をしてるから、よく虐められたものだ。

その点、ヒロなら大丈夫そうだ。

トゥールーズに4日間ほど滞在した後、シェリーが滞在していたと言う土地へと足を向けた。

途中、パリに寄りエッフェル塔からオルセー通りを通ってコンコルド橋を渡り広場へと向かう。

ヒロが行きたいと言ってきた所は、”マドレーヌ寺院”だった。なんでと思ったら、「マドリーヌならぬマドレーヌという名前だよ」と言ってきたからだ。

お姉様、ついに寺院にされちゃってるよ。

 

マドレーヌ寺院からエリゼ宮へと向かい、マリ二―通りをシャンゼリゼ通りへと下る。そこから凱旋門へと向かった。凱旋門を見終わるとセーヌ川を上りドイツ方面へと帰途につくかのようだったが、目的地は国境と言っても良い位の位置にある、リール。

パリから1時間、シャルル・ド・ゴール国際空港やディズニーランドのあるマルヌ・ラ・ヴァレだけでなく、ロンドンからもTGVが連結して停車する場所だ。

シェリーは、こんな所で暮らしていたのか。劇場や美術館が多いが、シェリーはサッカーしたくて選んだらしい。シェリーらしいや。シェリーも連れてくれば良かったかな。

でも、今回はヒロと男の2人旅だから我慢してもらったんだ。

そのシェリーは一言だった。

「行ってらっしゃい。楽しんできてね」

 

それだけだったが、優しくキスしてくれたのが嬉しかった。

一杯、お土産を買ったがどうしよう。6人の側付も各自とも買ってるし、ヒロもお土産を買っている。まあ、配達してもらうという手があるな。

 

ドイツを出て1ヶ月半経つと、側付入れて8人、無事にドイツに帰国した。

出迎えたのは執事だ。

「お帰りなさいませ」

「ただいま。これ土産だよ」

「ありがとうございます」

 

自分の屋敷へ向かった。

「シェリー、ただいま」

「マルク、お帰り~」

ハグしてキスされる。

それが、とても心地いい。

ヒロの声も聞こえてくる。

「ただいま、お土産たくさん買ったよ~」

「ヒロも、お帰り」

 

そして、ヒロは日本に帰国した。