甥っ子コンプレックス

27

いよいよ狩りの日が来た。

いつもの側付6人を私の周りに居させ、残り14人は要所毎に配する。

私自身に撃ってくる奴が居たら迷わず殺せと言っておく。

この側付は自然区域の獣を素手で殺せるから、狩猟時間が終わって人間が倒せなかった獣を倒す様に言う。

狩猟が始まる笛の音が聞こえてくる。

カールが何か言ってきてるのだが無視してやる。言い返したかったが、口を開くと罵声しか出てこないからだ。

グスタフォーにはヒロとアンソニーを押し付けて世話係にさせてきた。なにしろグスタフォーはワダと同じ文壇の知の塊だ。両方とも、良い刺激になるだろう。

カールの父親が狩ってるのが見える。

「あ、マルク様」

「成果はどうだ?」

「小物ばかりですよ」

「大きいのも良いが足を取られるなよ」

「御忠告ありがとうございます。マルク様の成果は」

「私は、まだなんだ」

「始まったばかりですからね。お互い頑張りましょう」

「ああ。じゃ、後で」

「はい」

他の奴等の居る所ではしてこないだろう。そう思い、わざと人気のない所に行く。カールが後を尾行してきているからだ。

そんな時、見つけた。馬から下りライフルを構える。

ズキューンッ……。

 

「ふう、やっと1匹目だ」

獲物を見に叢に入る。

「カール、そこでどうした? 私は、やっと1匹目だよ。こんな所に兎だ。可愛いな。逃がしてやりたいが他の奴等になるからな。抱っこしといてやる。逃げるなよ」

と、兎に向かって言ってやる。

「そんな優しい事を言ってると反対にやられるぞ」

「誰に?」と言いながらカールの方に向いてやる。

「お前にか?」と振り返ると同時に、カールの額に銃口を突き付けてやる。

カールの銃口は私の側頭部に狙いを付けている。

 

「どっちが先に撃つ?」

だがカールは黙ったままだ。

「マドリーヌとシェリーの敵討ち。それとヒロを侮辱した。そのつもりで今回の狩りを決めた」

 

カールは目を見開く。

「カール、聞いてるのか?」

だがカールは小声で呟いてるのか、声が聞こえてこないので言ってやる。

「カール、私だけでない。ヘル・グスタフォーも、お前を狙っている。グスタフォーには来るなと言ってるから、お前を撃つのは私だ」

カールの声が、やっと聞き取れるようになった。

「な……で、今頃、なんで」

「カール、お前を許さない」

「逃げろ、マルクッ」

「逃げろって。私の話を聞いていなかったのか」

カールはライフルを構え撃ちだしたので、そっちに目をやる。途端に目が釘付けになる。

「何だ、あれは…」

少しばかり茫然としていたら側付から声を掛けられる。

「マルク様、お逃げくださいっ」

「だがカールが」

「危険です」

 

それは私だけではないだろうと思いカールの名を呼ぶ。

「カール、カールッ」

「マルク、逃げろっ。そっちに大きいのが行ったっ」

「カール」

「う、うわあああっ」

カールは横から顔を出した大きい獣に横腹を咥えられた。

 

「カールッ」

「お……、俺を殺せっ。こいつに食われて死ぬより、撃たれて死ぬ方が良い。誰でも良いからっ」

目の前で、カールは獣に食われてしまった。

「ぎゃぁー……」

 

目の前で……。

昔は苛められていたが、こんな惨劇を目の当たりにするとは想像を絶していた。

「カール……」

「マルク様、早くお逃げくださいっ」

「しかし」

 

なかなか動こうとしない私に業を煮やしたみたいで、一番お気に入りの側付フィルに抱きかかえられ馬に乗せられると、フィルは馬の脇腹を蹴る。

途端に馬は走り出した。

「フィルッ」

「いいからお逃げくださいっ」