ロシア語で書かれている手記を訳した博人は、茫然としていた。
ふと見ると、桐で作られた箱も一緒に送られてる。
それを開けて見た博人は息を飲んだ。
そのアダム=バーンズ専用の家紋が綺麗な状態のまま包装されているのだ。
手書きで書かれた一枚の和紙が挟まれている。
それには、日本語で書かれてある。
恐らく、自分の叔父である、現『御』の字だろう。
「いつかは、きっと貴方の孫を、自分の甥っ子を次代の『御』にさせます。
あの子は、貴方の血を引いてる孫の中でも、最有力候補です。
私が死んだら、教えて差し上げます。
私を『御』にしてくれてありがとうございます。」
博人は、泣いていた。
「お爺様……」
何も言えなかった。
軽い気持ちで、家系史を紐解こうとしていたのだ。
まさか、こんな事が書かれていただなんて……。
「お爺様……。私は、跡を継いでいません。だけど、貴方のアレは私が日本に連れ帰ってました。現在では一つになり、ある人物の中に存在してます。御免なさい。そして、ありがとうございます」
他には何も言えなく泣いていた。
呟きがこぼれる。
「そうか、私にロシア語を教えてくれた貴人が、お爺様だったんだな。そして、初代『御』だったのか。知らなかった、御免なさい……」
そして、現『御』であり、自分の叔父に毒づいてやる。
「クソ爺め、こんな事を書きやがって。やっぱり、誰にも言うつもりは無かったんだな」