※ウォルター視点※
数人の仲良し友達と、家の近くで遊んでいた。
なのに、気が付くと違う場所に居た。
辺りには仲良しグループが皆居たので、まだ安心出来ていた。
そう、同じチャーチに通っている子達だ。
ここは、一体どこなんだろう。
そう思ってると、誰かが近付いてくる気配がする。
大人だ。
何かを話し掛けてくるが、何処の国の言葉なのか分からない。
分かったのは、その内の1人がフランス語で言ってきたからだ。
要約すると、こうだ。
ここはイタリアで、俺達は子ども隊の隊員として働く。
そして、勉学だけでなくスポーツ全般にIT関連も含め、銃器も扱う。エキスパートな殺人者になれ。
弱者は消される。
それを聞き、驚きのあまり何も言えなかった。
その様子を肯定と捉えたのか、すぐに訓練が始まった。
英米仏語はもちろんの事、ドイツ語にイタリア語、中国語もだ。
どちらかと言うと、椅子に座って頭を使う方を好むのだが、ここではそうは言っておれない。
なにしろ武術や銃器も扱えないと、すぐに消されるからだ。
6歳でぶち込まれてから半年後、中国人の大人と少年がぶち込まれてきた。
5人の少年達は強く、身軽だ。
その内の1人は、キリッとした顔つきをしている。
それがリンだった。
リンは、元々体育系の人間で、武術全般を得意とする。
黒髪黒目のリンは体格が良いので、ウォルターは自分より年上かなと思っていた。
ある日、ウォルターはリンに聞いてみた。
「ねえ、君は何歳なの? 運動神経良いね」
「赤髪君の名前は?」
「ウォルターだよ」
「赤髪のウォルターね。私は林(リン)だ」
「へー、エキゾチックな名前だね」
林は驚いた顔をして言ってくる。
「そんな風に言われたのは初めてだ……」
「俺は7歳だよ。リン、君は?」
「私は5歳。中国では有名な武術家の血を引いてるんだ」
「へえ、将来は武術の先生か」
「うん。太極拳を主にして、八卦掌とか少林寺に合気道。日本の柔道とかもね」
「俺は運動は苦手だけど、でも、まだ生きてるからな」
「頭を使って策を練るブレーンは必要だよ」
「そう言ってくれると嬉しいな」
リンが入隊して半年後。
リンを含めた中国5人の少年と大人隊と合わせ10人で、ある任務に赴いた。
戻ってきたのは、大人が2人とリンの3人だけだった。
リンは、詳しくは教えてくれなかった。
ただ一言だけだった。
「私と一緒に居た4人は、私の父上から師事されていた。子ども達の中では強かった連中だ」
「リン……」
リンの目には涙が溢れ流れているが、それを拭おうとはしない。
「私は、彼等の死を父上に……、彼等の家族に伝える。そのには、ここで大人隊よりも強く、賢く立ち回ってやる。だから、まだ死なない。生きて中国に帰る。」
ウォルターは、リンの口調と表情から強い意志を感じ取った。
そのリンは言ってくる。
「ねえ、ウォルター。君は、その頭脳を駆使して策略名人になって。年齢なんて関係ない」
「それなら得意のコンピューターで情報関連の右に出る者は居ない、と言われるまでのし上がってやる」
そこに声が掛かる。
子ども隊カピターノのアーノルドだ。
「その決意を固めるのは良いが、隊では秩序を乱すな」
「分かってるよ、カピターノ」
「リン、君は?」
「勿論、分かってる。一番のルールは、隊での位置だろ。その内、あんたをカピターノから役無しに蹴落としてやるっ」
カピターノのアーノルドは微笑んで応えた。
「その意気込みは買ってやる。精々、精進しろよ」