※林視点※
家の道場で組んでいた。
それが、何時の間にか薄暗い所に居た。
側には、同じ様に組んでいた子ども達も同様に周りを見回している。
ここは何処だろう。
暗くて冷たい。
ある日、赤髪の少年が視界に入ってくる。
その子は、ウォルター、7歳だと名乗ってくれたので、自己紹介をする。
林(リン)、5歳だと。
そして、ここはイタリアで子ども隊として働くという事を教えて貰った。
どうして他国の子どもを入れるのだろうと思っていたら、ウォルターは呟く様に言う。
「俺達の様な他国の人間は死んでも補充出来るもんな」
その言葉で分かった。
思わず、林は呟いていた。
「ああ、捨て駒ね。自分とこの子どもを一人でも減らしたくないからか」
隊での暮らしは、まあまあという感じか。
一日3食がきっちりと出てくるし、勉学に武術等のスポーツ全般、IT関連や銃器等の扱い。
林にとっては、武術やスポーツは得意中の得意だ。
だが、銃器は非常に抵抗がある。
武道家の嫡男という事もあり、素手で相手をやっつけるのは良いが、道具を持ってやっつける事は苦手なのだ。
子ども隊のカピターノであるアーノルドに声を掛けられる。
「相手が道具を持って殺しに来るんだ。そういう時は道具で対抗するものだ」
そう言われるたびに、林も繰り返す。
「私は武道家の人間だ。道具に頼るよりも自分の手でヤル」
「それだと、お前は直ぐに殺される」
半年後。
リンを含めた中国人の子ども5人と、大人隊5人の計10人で任務に赴いた。
他の4人の子ども達も素手でやり合っていたが、これだと自分が殺されると気が付いた。
その4人は、自分達の師匠の子どもを守る事に団結した。
リンは、慌てて声を掛ける。
「なっ……! おい、その構えはっ」
その4人は、3つの禁術である1つの構えを取っている。
「秀英、生きろっ!」
「俺達は、師を師として仰いでる」
「破門されるより、こっちの方が良い」
「我が中国に、林先生に栄あれっ」
「や、やめっ……」
禁術の構えをとった4人は、敵対の中央へ突っ込んでいく。
その禁術は、代々林家に伝われている術だ。
3つの内の二つは、まだ良い。
だが、残る一つは……。
そう思ってると4人は揃いも揃って一番危険な術の構えを取るだなんて。
林は、叫んでいた。
「や、止めろー! それは、それだけは止めろっ!」
叫ばずにはおられなかった。
「英っ! 楊っ! 鵜っ! 湘栄っ!」
未だ、誰も完成されてない術を、4人は完成させた。
なぜ完成されてないのか、それは直ぐに分かる。
それは相手を全滅させ、自分達も死ぬことに繋がるからだ。
リンの声は届かない。
いや、既に届く事は無かった。
その、誰も完成されてない術である禁術は、術者の死を以て完成する術なのだ。
その事を知ってるのは、彼等の師匠である林秀英の父と、その息子の林秀英だけだ。
「止めろ、って、言ったのに……」
相手を全滅させた4人の事は忘れない。
絶対に家に帰って、お前達の事を話す。
子ども隊4人と大人隊3人が死に、リンは大人隊2人と共にイタリアへ戻った。
黒髪チームが自分一人だけになった為、リンはウォルターとパティを組むことになった。
その半年後。
ウォルター8歳、林7歳。
金髪の大人と子どもの集団が、ぶち込まれた。
子どもの集団の中に、彼が居た。