※アダム=バーンズの視点※
サラサラとした金髪に、澄んだ青色の瞳。
背は低いが体格は良い。
何処から見ても、お坊ちゃまという感じだ。
戦いだなんて出来っこない、そんな風体だ。
アダム=バーンズは子ども達の寄せ集めを見て、ここがどんな所で何をするのか理解した。そして、大人隊の話も聞いて、総体的に理解する。
彼等は知らなかったのだ。
このアダム=バーンズの正体を。
ましてや、知ろうともしなかった。
アダム=バーンズを国王の前に差し出せば、まだ良かっただろう。だが、それをせずに子ども隊の方に振り分け入れたのだ。
この時、アダム=バーンズは25歳を目前に控えていた。
年齢的には大人隊だが、背が低かった為、ティーンエイジャーに見えたのだ。
隊での暮らしは、まるで日陰の様だった。
今迄の暮らしが、帝王学だ、武術だ、言語に政治などの文武を師事されてきて、まるで日なたの暮らしをしていたせいか、この隊暮らしは辛いものだった。
特に、銃器だ。
銃は狩猟の時しか使わなかった。
これ以外の事なら、そつなく熟してカピターノの位置になれるほどの人物だった。
その半年後、初任務を与えられた。
赤髪ウォルターと黒髪リンも一緒だった。
他のメンバーは、子ども隊が4人と大人隊が3人の、計10人だ。
何もせずに最初は相手を見ていた。
どんなにしても勝つ事は無い、負け戦なのは見て分かるからだ。
それに、相手の方が何倍もの大人数だ。
なぜ戦う必要があるのか。
それは、自分の国の領土を広げたいという、イタリア国王の思いからくる戦だ。
どちらも死人は出したくない筈だ。
話し合いでカタが付くのなら、話し合おう。
だが、大人隊の3人は反論してくる。
挙句の果てには、こう言ってくる。
「戦いたくないんだろう? 弱っちいチビは寝てな」
子ども隊は7人揃って話し合っていた。
話し合いでどうにかなるのなら、している。
そういう言葉が出てきた。
そして、7人の言葉が一致して取った行動は、これだった。
大人隊3人を自分達で殺す。
容易な事では無い。
3人共、強いからだ。それに、彼等は鬱憤晴らしとしてストレス解消の言い訳に使えるし、子ども隊は邪魔な存在だ。
だが、こちらには知能犯が2人に、実行犯が5人だ。
彼等は、大人隊3人を殺したのだ。
自分達の手で。
それは、大人が相手でも怯むことは無い。強いんだという証明になる。
その一部始終を見ていた相手の首領は、アダム=バーンズの顔をジッ…と見ていた。
そのうち、大人隊3人が死んだのを見届けると、何も言わずに自分達のアジトに帰って行った。
(さすが、あそこの子どもだ)
等と思われてる事を、バーンズは知らなかっただろう。
イタリアに戻ると、カピターノから問いただされた。
「どうして大人は1人も居ないのか?」
それに応じたのはバーンズだ。
「ガキは弱虫だから、見なくて良い、戦うなと言われた」
それは嘘では無い。
それを機に、子ども隊員は大人隊員を相手にして武術の組み合いをしだした。
だが、大人は直ぐに道具を使いたがる。
「弱い奴ほど道具を使うって言うからな」
ある一人の子どもが、放った言葉だ。
その言葉にムカついた大人達は、素手で子ども達と組み合う。
それは、お互いにストレス発散にもなり、敏捷性を養う事にも繋がる。
生傷は絶えないが、それでも武器は使わない。
それが、子どもにとってどんなに嬉しい事だったか。
そして、バーンズ27歳、ウォルター11歳、リン9歳になった時。
遂に、イタリア人の子どもが隊にぶち込まれたのだ。
銀髪碧眼で、育ちの良さが窺われる。その少年は何も言おうとはしない。
カピターノは自分と同じイタリア人が居るというだけで嬉しくなって、彼の名前が知りたくてちょっかいを掛ける。
名前だけでも教えてと強く言うと、その少年はやっと口を開き、呟く様に小さく放った。
「グズ……」と。
そのグズがぶち込まれたのと同時に、食事が変わった。
美味しいと部類されてる食事が、一層美味になったのだ。