アールは真っ裸にされると鞭で天井から吊るされ、鞭で背や腹を打たれる。

目の前で改めて見るアールの裸は筋肉が隆々と付いている。

マルク様も優しく撫でる感じだった鞭打ちが、段々とサマになってきている。

アールは何も発しない。

だが、鞭はアールの大事な所に掠る。それを見ると堪らなくなった。

「マルク様っ」

「煩い、お前は黙ってろっ」

 

アールの背に筋肉が付いており、その筋肉が邪魔なのか、鞭は脇腹に微かに当たる。

「マルクさ、ま……」

 

何度も何度も鞭を揮う。

するとコツが分かってきたのか、マルク様の鞭はアールの腿に当たった。

「っ……」

 

狙いを定めたのだろう。

今度は迷う事無く下半身に当たった。

「ッ……」

 

彼はイタリア語を口にしていた。

そりゃね、誰でも鞭の様な物で、その大事な所を強く当てられると痛いよ。

それに、人間は窮地に陥ると母国語で早口になると言うが、アールはイタリア人なのか。どおりで銀髪にダークブルーの瞳の持ち主だと思ったんだよ。

その事はマルク様も気が付いたみたいだ。

呟きが聞こえたのか、今更気付いても遅いと言われたが中国語で話していたのだから分かるわけないだろう。

 

ビシッ!

と張り詰めた音が聞こえたかと思うと、ドサッと何かが落ちた音がした。

それはアールが床に倒れた音だった。

遂に言っていた。

「マルク様、人殺しは止めて下さい」

「ウィル、貴様は誰に言ってる」

「マルク様の手は医者の手です。医者が人殺しなんて」

「煩いっ」

 

躱そうと思えば躱せる。

だけど、その鞭を受けた。

 

ビシッ。

 

迷う事無く、私の顔に当たった。

マルク様は、一部始終をじっと見ていたフィルに声を掛けている。

「フィル、ウィルを連れて行け」

「どこへ」

「病院に決まってるだろ。その傷を治療してもらうんだ」

 

フィルは安心気な表情をして応じている。

「はい、畏まりました。それで、そちらの男は」

「こいつは、このまま放っておく」

「は、はい」

 

マルク様、貴方は優しい御方だ。

側付である私に傷の治療だなんて、普通はさせないだろう。

 

数日後、覚悟を決めて本宅に足を向けた。

「マルク様、私の手当てをして頂きありがとうございます」

「私が手当てしたのでない」

「でも、マルク様がフィルに言って下さったお蔭で助かりました。ありがとうございます」

 

お互いが押し黙ってしまったが、その沈黙を先に破っていた。

「マルク様、私の意思は固いです。どうか、私に世界を見て歩く事をお許しください。お願い致します。私は、守りたい相手を傷付けることなく、また泣かせたくも無いです。私は自分の意思で決めたのです。だけどフィルには相談しました」

「フィルは何も言ってきてないぞ」

「私は自分で言いたいので黙って欲しいと、お願いしたのです」

「貴様は」

「お願いです。マルク様はヒロト様と居られる時は和やかで優しくなれる。それは、元々がお優しいからです。マルク様、私は世界を知りたいのです。私たち側付にとってドイツに来た事はハングリー精神が失われつつあります。それで良いと思います。ドイツで学んだ事を活かし生きていく事が出来る。それに、私は自分の生まれ育った場所に骨を埋めたい。そう思っております」

 

暫らくすると返事があった。

「分かった……」

「マルク様」

「この私に理屈を言ってくる奴は居なくなれ」

「マルク様」

「二度とドイツに来るな」

 

その言葉を聞き首を垂れる。

「ありがとうございます。御身、お大事に」

「ついでに、あの拷問部屋に居る奴も連れて行け」

「え、拷問部屋って」

「あのまま放りっぱなしにしてたからな」

「な、何て事をっ」

「とっとと出て行けっ」

 

無事に卒業することが出来た。

アールなんて、ぐっすりと寝ていたほどだ。

なんてタフな奴なんだ。いや、何も考えない、神経が図太いだけかもしれないな。

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