アールの口から発せられた言葉は、一言だけだった。

「カピターノ……」

 

ここにきてイタリア語で応じるのか。

英語で聞かれてるのだから英語で応じろよ。

レイは目をまん丸くしてるし、ボスに至っては意味が分からないのだろうキョトンとしている。

 

それに、何だって。

何て言った?

もう一度、さっき言ってくれた単語を再度、言って貰っても良いかな。

レイは、そんな私の思いを代弁してくれていた。

 

「君が、カピ……、て、え……」

レイはイタリア語が分かるのか、イタリア語で話し出した。

 

バカ正直にボスに通訳しても良いだろうか。

「カピ……」

 

レイは息を整え、英語で無くイタリア語で聞いている。

「え、と、もう一度、聞き直しても良いかな? 君は何をしていたの?」

 

はっきりとアールの声が応じている。

「カピターノ」

「君はイタリア人なのか」

「そうだ」

「にしては、体型が細くないよね」

「ウィルにもっと食べて太れと言われて」

「誤魔化す事も出来る筈だが、どうして」

「ウィルにも言ってない。それにスポーツのコーチだとウィルは言っていたが、おおよその事は当たっている。だから覚悟を決めて言ったんだ」

「イタリア隊は文武共に秀でると聞いている。君が太って無ければ信じるだろうが」

「こっちに来てから食べる様になった。ウィルが煩く”もっと食べて太れ”と言うから」

 

そう言うと、スマホを取り出し、太る前の写真を見せている。

「ここに来る前の顔だ」

「本当に……、あれ、でも、待って。この顔って探し人リストに載って、たしか見つけたら賞金は1,000,000US$」

「それを隠すために太らせてる」

「正直者なんだね」

 

そう言われたアールは戸惑っている。

おそらく、その手の言葉は言われ慣れてないのだろう。

「え、そ、そうなのか…… 」

「言われた事無い?」

「全然、全く……」

 

くすくすと笑いながらレイは私に聞いてくる。

「ウィルは知ってたの?」

 

イタリア語で聞かれたので、イタリア語で返してやる。

「知らなかったです。そもそもアールは私有地に侵入していた賊でしたから」

「なるほど。あ、もしかして2人の出会いって、”侵入者は誰だ、探し出せ”という関係か」

「そうです」

「そうなんだ」

「でも、ほっとけなくて」

「うん、分かるよ」

「そこでの仕事が終わったので、シンガポールに来たんです」

「そうか、私は運が良いな」

「そう言って頂けると嬉しいです」

0

Follow me!

前の記事