甥っ子コンプレックス

すると元気な声が聞こえてきた。

「あー、ここに居たあ」

「え、なんでマルクが……」

その声の持ち主はキョージとエドだ。

とにかくキョージは煩い。ペラペラと喋り続けて”煩い”と言っても、しつこく話してくる。エドは喋り屋では無いが、キョージの話し相手になり相槌を打っている。

「リューゾー、次は音楽の時間だよ」

「エドワール様、ヒロト様は、まだ今日の分は終わってません」

だが、ヒロトは既に道場の入り口に居た。

「ありがとーございましたっ」

 

ぺこっとお辞儀をしてヒロトはエドとキョージと一緒に道場を後にした。

「あー……。音楽に向ける情熱の半分でも良いから、こっちに向けて欲しいなあ」

その言葉に、思わず返していた。

「リューゾーも大変だね」

「まあ、今日はマルク様はご自身で来られたので良しとしますか」

うわ、藪蛇だ。

「さっきので疲れた」

「まだまだです。あんな緩い一発で倒れるなんて、らしくないですよ。さあ、いきます」

いや、緩くなかったぞ。と言いたかったが、文句は言えなかった。

それからと言うものの、ヒロトは頻繁に私の部屋に来るようになった。

 

ノックをして自分で開けて入ってくる。

「良いでしょうか?」と声を掛けてくるが無視してると、今迄の様に勝手に自分で本棚の本を漁り、誰かが呼びに来るまで居座り本を読んでいる。

いつもはソファなんだが、リューゾーが来る時は必ず「移動します」と言って伺いを立ててくる視線を寄越してくる。そんな時は私のデスクの下にシートを敷いて、そこに座り込んだり、書斎の左奥にある部屋に入ったりしてリューゾーを撒いている。

左奥は別に良いが右奥の部屋に入ろうとしていた時は、さすがに睨みつけていた。

右奥の部屋は誰にも見られたくないからだ。

 

そんなある日、お姉様が死んだ。

しかも、私の目の前で車に轢かれた。

「何故……。マドリーヌッ」

 

マドリーヌに走り寄り抱き起す。

「マル……」

「マド」

「マルク、ヒロと……、なかよ・く……」

姉は、姉の一番はヒロの事だった。

「ヒロと、仲良く、して……」

それが、最後の言葉だった。

「マド……、マドリーヌッ……」

マドリーヌ。

私の大切な、最愛なる女性。

何故、私の目の前で轢かれるんだ。私はカールに呼ばれて来ただけなのに。

そこで気が付いた。

カールは何処だ。

 

だけど、それよりもマドリーヌの事で頭が一杯だった。

それを機に、私は自分の部屋に籠りだした。

そして、ヒロも私の書斎部屋に来なくなった。

「マドリーヌ………。私の、私の大事な人……」

 

姉の後を追う様に母も死んだ。

何故なんだ。

お姉様っ、お母様っ。

何もする気が起きてこない。

だけど、私は医者として働かないと。

ここの跡継ぎになる為に。

だけど、暫らくの間は何もしたくない。

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『Asami Novel』のあさみと申します。
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