ここはドイツにあるフォン・パトリッシュ邸の一室。
そこでウィルはフォン・パトリッシュ家のジュニアと対峙していた。
「マルク様」
「何故だ」
「お願いです。私は、挑戦してみたいのです」
「ここに居ても出来るだろう」
「自分の為に、もっと切磋琢磨したいのです」
「ウィルッ」
「ここには20人も必要ではありません。私は、今迄は甘んじてきた。だけど、自分の力を、外に出ても生きていける力を得たいのです」
「その為に、イタリアから教えに来て貰ってるだろう」
「あの王子は契約が切れたので、既に帰国されてます」
「それならフィルやアランと」
「あの2人は相手になりません。もっと強い相手とやり合いたいです」
「とにかく、駄目なものは駄目だっ」
「マルク様っ」
「駄目だっ」
そんな時、ヘル・グスタフォーからイタリアと隣接した私有地に、何者かが侵入していると情報を貰い、そいつを捕獲するよう指示された。
「今の話を」
「生きて連れて来るんだ。お前なら出来るだろ」
「マルク様、今の話を」
「お前は強いからな」
「……分かりました。その代わり、連れて来ると、先程の話は了承して頂けますか?」
「そいつの状態次第だな」
「生きて、傷も付けずにですか?」
「お前なら出来るだろう?」
「やります」
イタリア国に隣接した私有地に誰かが侵入したから、そいつを連れて来いと指示を出され、つい聞いていた。
くそぉ、足元を見やがって。
取り敢えず支度をしよう。
そう思い自分の部屋に向かう。
ここは実力のNo.1からNo.3までの位置にある3人は個室をあてがわれる。
私は7位だが、ジョンの側に居たくて7位を保持している。可愛いジョンはすぐ泣いてしまうので、皆から虐められるのもあり、表のNo.1を保持しているフィルと一緒にいつも守っている。
いつもはフィルとジョンの3人一組で任務を遂行するのだが、今回は違う。
私1人だけだ。
たまに1人で任される時があるので、そのつもりで支度をする。
コンコンッとノックが聞こえるが無視だ。
「ウィル、居るか?」
この声はフィルか。
「悪い、今は取り込み中だ」
「お前の裸なんて見慣れてる」
そう言いながら入ってきた。
「何処に行くんだ?」
「イタリア近辺。ジョンの事よろしく」
聞こえてないのか返事がない。
「あの事、マルク様に言ったのか?」
「言ったよ。そしたらタイミングよく賊が侵入したと連絡があって任務を押し付けられた」
「何も聞いてない……」
「”生きて傷を付けずに連れてこい”とか”お前なら出来るだろう”と言われた」
「はあ……。ったく、あの人は」
「1人でだ」
「大丈夫なのか?」
「仕方ないだろ」
「気を付けろよ」
「ダンケ。ジョンの事よろしく」
「ああ、そっちは任せとけ」
やっと返事を貰い、安心してドイツを後にした。