そして、時を遡り2年前。
こちらはドイツにあるフォン=パトリッシュの側付専用の建物。
「フィルー、ウィルが帰ってこないよー」
「ジョン、ウィルは任務だよ」
「にしても、遅くない?」
「手こずってるのかな……」
「え、もしかして1人なの?」
「そうみたいだよ」
「ウィルは時々1人であるよね」
「あいつは強いから大丈夫だ」
「そうだね」
ウィルはジョンには何も言ってないのか。
言われても、ジョンには意味が通じないだろうな。
そのジョンは御守りを握っている。
ここでは実力が3位までの奴は個室を与えられるのだが、それ以外の位置に居る奴は3人部屋になる。ウィルが卒業した今、ジョンはフォローしてくれる奴が居なくなり虐めが酷くなっている。
「ジョン、今日から一緒に寝ようか」
「え、フィルと?」
「嫌か?」
「ううん、嬉しい」
ジョンは目をキラキラと輝かせベッドに潜ってきた。
「えへ、フィルと寝るのは久しぶりだね」
「そうだな」
ジョンはブツブツと文句を言いだしてきた。
「まったく、ウィルは任務なら任務だと言って欲しいね。秘密主義なんだから」
「急に決まったから言えなかったんだろ」
「フィルは知ってるのに?」
「あいつが出掛けようとしている時に会って、その時に聞き出したんだ」
「それじゃ、会えてなかったらフィルも知らなかったって事?」
「そうだよ」
「まあったく、あの秘密っ子は」
「ジョン、悪口もその辺にして寝よう」
「うん、お休み」
「お休み」
もう戻ってこない仲良しウィル。
いつも3人でくっ付いていた。
ウィル、元気で。
ジョン。
君は知らないだろうが、あいつはお前をずっと護ってきた。
任務を終えて戻ってくる度、心は闇に少しずつ飲まれていく、蝕まれていくんだ。
それでもジョンが居るから、まだ保っていられたんだ。
人間で居られたんだ。
今のジョンには難しいだろうな。
ウィルと私にとって、君は人間に戻してくれる存在なんだよ。
いっそ闇に飲み込まれると楽になれるのに。
でもジョンが居るからこそ、私たちは物事を考える事が出来るんだ。
あいつは卒業したよ。
もう二度と会う事は無い。
お前に言わなかったのでなく、言えなかったのだろう。
言えば泣かれるから。
お前の泣き顔を見ると意志が揺らぐから。
だから、お前も強くなれ。
私も手伝ってやるからな。
静かに夜は更ける。
急に痛みがきた。
「うー……、何なんだ……」
「ったいよぉ……」
声のした方を見るとジョンは頭を擦っている。という事は、こいつの頭突きを食らったという事か。
顎を擦っていた。
「うー……」
ジョンは頭だ。
「んー……」
仕方ないなあ、自業自得だ。
「大丈夫かあ?」
「ぶじゃない……」
「俺の顎にぶつけて、お前はあ……」
「ごめん……」
「寝相の悪い子は、お仕置きだっ」
「っめんなさーい」
ウィル、ジョンは任せろ。
お前は自分の選んだ道を行け。