可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 15

意外と先輩は走るのが遅くて、余裕に撒けたのが嬉しかった。そのまま教室で催しの番をしていた。昼前になると昌平さんの声がしてきた。

「ゆーうーちゃーん」

「暇なんですか?」

「楽しい事は出歩くよ」

悟さんも一緒だ。

「悟さんも……」

「昌平の付き添いだから」

「付き添い?」

どういう意味なのか分からなかった。その意味を知ったのは、もっと後になってからだった。3人でお昼ご飯を食べた後、俺は昌平さんと悟さんに言っていた。

「今日は片付けがあるので帰りは遅くなります」

昌平さんは「気を付けてね」と言ってくれたが、悟さんは「何時に帰ってくるんだ?」と聞いてきたので素直に時間は分からないですと返した。

片付けも終わり帰宅すると、制服を脱いでベッドに寝っ転がる。すると時計に目がいった。

「21時半かあ。はー、しんどかった。でもセーラー服着なくて良かったぁ」

本音を言えば、このまま寝ていたかった。おそらく夕食は片付けられているだろう。この家って、時間に間に合わない事を朝のうちに言ってたら何かを作って置いてくれるのだが、この家の子でない俺には冷たい。

それに、朝は言わなかったから。まさか、こんな時間になるとは思いもしなかったもん。

ハーフサイズのクレープ2種類1セットとシュークリーム2個が1セット売りとして売ってるのを見ると、他にも菓子パン2袋、焼きお握り3個、焼きうどんも思わず買ってしまったので、それを夕食にする。

お蔭で、お小遣いの1,500円が無くなった。でも、美味しそうだから良いか。ペットボトルのお茶はクラスと部活から「お疲れー」と言われ1本ずつ貰えたし。

この家の食事は御馳走だが、子どもの俺には勿体なさ過ぎる食事なんだ。僻みではない、本当に大人向けのメニューで子ども向きではないから、本音を言えば、焼きお握りや焼きうどんの方が嬉しいんだ。

「んー、美味しい。この家の食事メニューに、お握りとか焼きうどんなんて無いだろうな。自分で作れば良いんだけど許してくれないよなあ。キッチンには入るなって言われてるし……」

焼きお握りと焼きうどんと菓子パン2袋を食べ終わると一息ついた。

「後で、悟さんにクレープとシュークリーム持って行ってあげよう」

そうだ、もしかしたらエッチされるかもしれないのでパンツだけでもポケットに入れとこう。なんか緊張してきたぞ。

歯磨きうがいをして、隣の悟さんの部屋の扉をノックした。

「誰?」

「悟さん、まだ起きてますか?」

すると扉が開いた。

「優介、遅かったな」

「ごめんなさい。あの、これ、売れ残りを買って帰ったんです。どうぞ」

「お、上手そうだな」

おいで、と言われ手を握ってくれた。途端に緊張してきた。

「あ、あの悟さん」

「なに緊張してるんだ」

「帰ってきましたって挨拶を、まだしてないのですが、この時間になっても大丈夫ですか?」

別にしなくても良いと思うが、でもしたいと思うのなら一緒に付いて行ってやると言ってくれたので、お願いした。

リビングには誰も居なかった。だから先に『御』の部屋に連れて行ってくれたので「遅くなってすみません。ただいま帰りました」と帰宅の挨拶をしたら、微笑んでくれて「お帰り」と言ってくれた。

次は昌平さんの部屋に連れて行ってくれたので、挨拶したらこう返された。

「お帰り。ご飯はどうしたの、まだ食べてないんでしょ」

「食べました」

「本当に?」

と訝し気な顔をしてきた。

いや、本当に食べたんですよ。昌平さんはキッチンに入っていこうとしている。

「昌平さん、キッチンに入っては」

「いいから。食べないと育たないよ」

「いや、本当に食べたので」

「悟も食べるだろ」

急に振られた悟さんは「ほえ?」と間抜けな声を出していた。そんな悟さんの表情と声に笑ってしまった。

「優介、何を笑ってるんだ」

「ははは、だって、だって……」

昌平さんの朗らかな声が聞こえてくる。

「優ちゃんは楽しそうに笑うねえ。それじゃ、この隙に。冷蔵庫の中は何があるかなあ」

「あ、そうだ」

「なんだ悟、急に」

「さっき優介からクレープとシュークリームを貰ったんだ。持ってくる」

「クレープが欲しいっ」

甘い物には目が無い昌平さんは、その言葉に食いついていた。

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