可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 25

悟さんの声が聞こえてきた。

「なんだ、誰も居ないのか?」

その声に、昌平さんは応えた。

「悟、こっちだよ」

「何だ? あ、優介、こっちに」

昌平さんは悟さんの言葉を遮ってくれる。

「悟、この週末は優ちゃんの引っ越しだからな」

「引っ越し?」

珍しいことに、悟さんの目が大きく見開いた。隆星さんが、昌平さんの後を継いでくれる。

「鯉の居る離れの方にだ」

「なんで……、ゆうす」

昌平さんは件の物を悟さんに見せた。

「これだよ、これ」

悟さんは不思議そうな表情をしている。

「なんでオーブン?」

「昨日の文化祭のクッキーとパンが美味しかったから」

悟さんは俺に聞いてくる。

「優介。お前、パンやクッキー焼けるのか?」

「はい、焼けます」

「他には?」

「ケーキとシュークリームとグラタンとドリアとピッツア」

昌平さんは嬉しそうに言ってくる。

「やったぁ~。今週末の夕食は優ちゃん手作りのグラタンだ」

隆星さんも嬉しそうに言ってくれる。

「ピッツアか、良いね」

『御』も嬉しそうだ。

「デザートはシュークリームか。美味しそうだ」

だけど悟さんは慌てている。

「な、何を勝手に……」

だが、俺は3人に言っていた。

「昌平さん、大皿で取り分けながらのグラタンでも良いですか? 隆星さん、ピッツアってトマトソースと照り焼きソースとホワイトソースしか作れないんです。1枚ずつでも良いですか? 『御』、シュークリームの中身は抹茶クリームでも良いですか?」

その言葉に3人は「うん、宜しく」と返してくれる。だが、悟さんだけは違っていた。

「優介ー! そこでOKするんじゃないっ」

だけど、毎週はきついと言うと、第2土曜日の夕食を”優ちゃん料理の日”にしてくれた。俺は嬉しくて言っていた。

「明日、掃除しますね」

悟さんは睨みっぱなしだ。そんな悟さんに、俺は言っていた。

「悟さん、話があるので部屋に行っても良いですか?」

その言葉に即答したのは昌平さんだった。

「優ちゃん、ここでは話せないの?」

「ごめんなさい。悟さんだけに聞いて貰いたいので」

「分かった。それじゃ、今週末は引っ越しするから、皆、開けといてね」

隆星さんと昌平さんは連れだってリビングから出て行った。

「あそこ、カーテンとか無いよな」

「何にも無い」

「全部、蔵か?」

「いや、バイク屋」

「なんで族のたまり場に持って行くかねえ」

「でも、古いからな」

「それもそうか、最新のを買えば良いか」

俺は悟さんの食事が終わるのを待って、悟さんの部屋に向かった。トントンッと扉を叩く。

「悟さん、良いですか?」

「ああ」

扉を開けると、不機嫌な表情をした声が返ってきた。

「なんだ?」

うわぁ……、機嫌が悪そうだ。それでも言うんだと思い、今日あった事を話していた。

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