可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 26

はあ……と深く溜息を吐いた悟さんは聞いてきた。

「それじゃ、どうして昌平はオーブンを買ったんだ?」

「分からない。もしかしたら掃除してたのを見て知ったのかな」

「全く、もう」

「で、ね。悟さん」

「良いか、優介。私は許さないからな」

「悟さん、聞いて。本題は、ここからなんだ」

「本題?」

「うん。あの……、い、一緒に、悟さんと一緒に2人で暮らしたい」

「優介?」

顔を見ることが出来ないので、俯いて言っていた。

「そりゃ、ここみたいな御馳走を作る事は出来ない。ワンパターンな食事になるだろう。

それに、中学までは給食だけど、高校になると弁当になるんだ。俺は自分で作りたいんだ。中学卒業するまで頑張ってレパートリーを増やして、悟さんのお弁当も作りたい。

そこまで考えて、掃除したんだ。後はワックスを掛けるだけなんだ」

「優介……」

「あのね、水と電気も使えるし、後は物を買うだけなんだ。コンロも付いててね、もちろんシャワーも付いてる。昔、お父ちゃんと暮らしてた家に似てるんだ。お湯が張れて浴槽の外で身体を洗うスペースもあるんだ」

「お前、まさか」

「それに、好きな人と一緒にずっと居るんだ。とっても贅沢で幸せな気分になれるよ」

はあー……と、溜息が聞こえてきた。

「分かった。そこまで考えていたなんて知らなかったよ」

その言葉が聞けて嬉しくなった俺は言っていた。

「ありがと。でね、これが鍵なの。行って見よ」

悟さんをドアの方に押してやる。

「待て。お前、これから連れて行くつもりだったのか?」

「うん、そうだよ。善は急げって言うでしょ」

鯉が泳いでる池を横目で見ながら、離れのドアのカギ穴に差し込む。あ、言うの忘れてた。

「待って、悟さん」

「何だ?」

「靴は脱いでね」

「は?」

「土足厳禁ですよ。ほら、靴はここに」

そう言って玄関を指差してやる。

やれやれ、全く……と言いながらでも、悟さんは靴を脱いでくれた。電気を点けると、懐中電灯の灯りを消した。

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