可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 37

友兄は口を開いてきた。

「優介、背伸びた?」

「うん。この1年間で10㎝」

「へえ、ならもう少し伸びるかもな」

「理想は悟さんを追い越す事」

そうかと言いながら友兄はポンポンと優しく叩いてくれる。思い切って聞いてみる。

「友兄、学生服って縫える?」

「どんなの?」

「学ラン」

「おおっ、見てみたい」

いや、見るのではなく縫えるのかと聞いたのだけど、まあ良いや。部屋から学ランを持ってきたら、まだ着もしない内に友兄は言ってきた。

「きつくないか?」

「え?」

「新しいのに買い換えるか、ギリギリまで出して……」

友兄は袖口に手を突っ込んでいる。

「器用な奴だなあ。ちょっと切るぞ」

「うん」

裁縫道具を持ってきたら、友兄は手早くしてくれる。

「4㎝出せるな。んで、8㎜分を他の生地でこのテロンテロンと合わせて縫う」

「さすが友様っ」

「任せなさい。あー、首回りか。先に袖を縫ったら着て見せて」

「はいっ」

「その前に、前立ての部分を。ふんふん、チャックでなくボタンか、ならばひっくり返して裏地との境をチョチョチョンッと切りまして、4㎝出せるな」

友兄が前立ての部分を直してくれている間に、俺は袖を直していた。

「両袖、出来ました」

「うん、こっちも前立て出来たぞ。着て見ろ」

「はい」

友兄は首回りの襟止めを直してくれた。

「あ、首が楽だ」

「学ラン、カッコいいなあ。で、腹周りはどうだ?」

「少し緩々かも……」

「少しなら良いだろ。ズボン穿いて」

と言われ、ズボンを穿くとチョチョチョンッと切った友兄は、そのまま両方の裾を直してくれた。

「カッコいいなあ。よし、その学ランでパーティーに殴り込みだっ」

「いやいや、違うでしょ」

写メられたが、なんか照れくさい。でも、友兄と2人だけの時間を楽しみたいので、お茶を出して近況報告みたいな話をした。

「へえ、悟と2人暮らしか」

「うん、楽しいよ」

「そっかあ、優介は悟が好きなのか」

その言葉に真っ赤になってしまった。

「だめ、かなあ……」

「悪いとは言ってないぞ。ただ、悟の方は、どう思ってるかだな」

「好きだよって言ってくれた」

ふふっと微笑んでくれる友兄は、こんな事を言ってくれた。

「良かったな」

「本当に、そう思ってくれてる?」

「思ってるよ。お互いが、そういう気持ちを持って向き合っていると、周りの人間も何も言わないからな。それよりも、食事作りが一番大変だろ」

「何か簡単に作れるメニューを知ってたら教えて」

そう言うと、いくつかのレシピを書いてくれた。

「ありがと、友兄」

「今度来た時は、優介の手料理を食べさせてくれ」

「うん、それまでに頑張って自分のモノにしとく」

「いっちょ前に言う様になったなあ」

えへへ、と照れていた。誰よりも友兄に言われるのが、とっても嬉しいんだ。

友兄と一緒にパーティー会場に入ると、始まる少し前だった。さすが友兄だな、間に合った。隣には友兄が居る。ありがとう。

すぐに会場が暗くなりパーティーが始まった。お開きになる前に、友兄の声が聞こえてきた。

「さて、何を貰って帰るかな」

「何の事?」

「料理だよ。2食分は浮くぞ」

「持って帰って良いの?」

「パーティーの料理って、持ち帰りOKだよ」

「へえ、じゃあ俺も貰って帰ろう」

友兄は6パックを貰い、俺は悟さんの分も含めて8パック分を貰った。レンジで温めると良いと教えてくれた友兄は、門限だからと言って帰って行った。

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