可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 4

悟さんに手を引っ張られ「部屋はここだよ」と案内された。僕の部屋の左隣が悟さんの部屋で、右隣が執事さんの部屋。この二部屋だけは直ぐに覚えた。

部屋に入ると、机と大きな窓に目がいった。部屋の中にトイレとシャワーが付いてるのにも驚いた。そう、本宅の一部屋を使わせて貰っていたのだ。まだ6歳にもなってなかった。だから分からなかったのだ。

そのうちに悟さんが忙しくなり顔を見る回数が減ってきた。だけど、僕は家のルールというものが分かって無かった。友兄との約束。それだけは守るんだと、そういう思いでいた。

執事や使用人の仕事を見てるだけでなく、自分もしたいと思っていた。

彼等の仕事を取り上げるのではなく、いつかはここを出て行くのだから、その時に困らないために用意するんだ、という思いがあったからだ。掃除の仕方を教えてもらっていた。一番大変だったのはお風呂とトイレ。窓ふきなんて手がたわないのでお願いしていた。

ここは子どもなんて居ない。自分1人だけで、他は大人ばかり。

使用人の人が掃除をしに来る日は1週間の内の3日間だけ。その日は僕も一緒に掃除をしていた。その年の夏休みにはワイパーを持たせてくれた。いつも使用人の人が窓拭きしている時に使っている物だ。

机の上に立ち、ワイパーを持ち腕を伸ばし爪先で立つように背伸びする。

「優介君、可愛い」

「便利ですね」

「そうだね。次からは、それを使って窓拭きすると良いよ」

「はい、ありがとうございます」

それと、もう一つ出来ることが増えた。執事さんから言われたんだ。

「優介君、部屋の掃除が上手になったんだってね」

「上手かどうか……」

「私の部屋の掃除を、お願いしても良いかな?」

「執事さんの部屋?」

「うん。1週間に1回で良いから、窓拭きをやってくれるかなあ?」

必要とされるのが嬉しかった。他にも執事さんは言ってきた。

「窓の近くには本棚があるんだ。窓拭きが終わると、読んで良いよ」

その言葉が嬉しかったので、直ぐに返事をした。

「はい、やります」

その週から執事さんの部屋で窓拭きをするようになった。執事さんの居る時に、執事さんは部屋を片付けて僕は小さい窓の方を拭いていた。さすがに大きい窓の方は、背伸びしてもたわなかったからだ。

掃除が終わると、執事さんはおやつにしようと言って2人でおやつを食べていた。その時に絵本を読んだり、執事さんから勉強を教えて貰っていたりした。

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