可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 42

思わず溜息が出ていた。

「なに溜息吐いてんの? 顔洗っておいで。食べに行くよ」

「え、俺のもあるんですか?」

「もちろん」

昌平さんは笑いながら返してくれた。食堂に向かってる間、昌平さんは御機嫌そうだ。

「まあ、寝る子は育つって言うからねえ」

口からポロッと出てきた。

「悟さんが居ないから」

「ん?」

「いつも2人で寝てて、悟さんがアメリカに行って……。1人だと中々寝れなくて」

「優ちゃん、こっちに戻っておいで」

「でも」

「悟は3年間、アメリカに仕事をしに行った。その間、ずっと1人で離れに居るつもり?」

「でも」

「あのね、勉強だけじゃなく、人とのコミュニケーションを取る事も大事だよ」

「でも、部屋は片付けたから」

「大丈夫だよ。一緒に寝よう」

「え、しょ、昌平さんと?」

「寝れない時は子守唄を歌ってあげよう」

昌平さんの子守唄。そう思うと笑っていた。

「こーら、泣いたり笑ったりと忙しい子だねえ」

「だって、だって、昌平さんが子守唄」

「それじゃ、今夜は歌ってあげよう」

もう1回、顔を会い直しておいでと言われたが、食堂は直ぐだ。

「優ちゃん」

「大丈夫ですよ。今夜、宜しくお願いします」

「任せなさい」

食堂に入ると2人の声が聞こえてきた。

「ぐっすりと寝た、という感じだな」と、『御』の声が。

「昌平に意地悪されたのか。泣き顔になってるぞ」と、隆星さんの声が聞こえてきた。

その2人に返す。

「おはようございます。気が付いたら朝でした。隆星さん、昌平さんが子守唄を歌われるのご存知でしたか?」

隆星さんは怪訝そうな表情で呟いてる。

「昌平が子守唄?」

「もう、涙が出てしまって、笑ってしまって」

「なるほど。想像出来なくて涙が出るほど笑ってしまったっていうアレか」

その声に昌平さんが返す。

「まー、失礼な。私の美声を聞かせてあげるわ」

「食べてからにしてくれ」

食後、昌平さんは歌ってくれた。皆して笑っていた。隆星さんなんて、これだ。

「あー、朝から笑った笑った」

夜に歌ってくれた子守唄は外国の歌だった。

それから、昌平さんの部屋で寝起きして学校に行っていた。昌平さんは兄のようでいたり父親の様だったりと、昌平さんの温もりは安心できる。

夜になると「仮眠2時間とってるから」と言って、ベッドに潜ってきた。その温もりに、眠気がくる。そんなある日、俺は言っていた。

「昌平さん、ありがとうございます」

「何が?」

「部屋に入れてくれて」

「気にしなくて良いよ。それに、優ちゃんと一緒に居れるから嬉しいんだ」

離れに戻りたいと言うと、俺の顔を見て昌平さんは許可してくれた。

「ん、もう大丈夫そうだな」

それからは、週末の土日は昌平さんが離れに泊まりに来てくれた。日曜と月曜の朝食は昌平さんが作ってくれる。

土曜の夕食は「優ちゃんディナー」と称して、『御』や隆星さんは、本宅の食事を4品ほど持ち寄って食べに来てくれていた。日曜の夕食は昌平さんと2人だけの食事だ。

その昌平さんに言っていた。

「昌平さんが作る料理を作ってレパートリーを増やしたい」

「一緒に買い物行こうか」

そこから、俺の料理好きは始まった。

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