可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 60 優介、自分の生い立ちを知る

一緒にシャワーを浴びてシーツカバーも新しいのに変えた後、ベッドに寝転んで寝る態勢に入った悟さんは腕枕をしてくれて、話してくれた。

俺の父親の父親が本家の人間、つまり俺のお爺ちゃんが財閥の金持ちだと。

今現在、斎藤財閥のCEOに居座ってる奴は、俺にとって小父さんだと教えてくれた。だけど、その人はお父ちゃんの父親の妹の婿。簡潔に言うと、優介のお爺ちゃんの妹と結婚した男性なんだ。だから、全くの赤の他人と言う事になる。

その妹が斎藤と言う姓を捨てなかったから、その男は婿入りして斎藤の姓を名乗った。それは、他の姉や妹も斎藤を捨てずに結婚したから、斎藤という姓を持った婿は沢山いた。なにしろ優介のお爺ちゃんは6人姉弟妹の4番目だったからな、しかも男は自分1人だ。

だから、父親が死んだばかりの優介を引き取って育てたかった。後見人と呼ばれる、法に乗っ取った正当なやり方なんだ。だけど優介は嫌だと抵抗した。

誰も何も言わないのに、どうしてなのかは分からないが「嫌だ!」の一点張りで、だから山口家で預かる事にしたんだ。

斎藤康介の父親は息子の結婚相手が許せず、孫である優介が生まれても実家に来ることを許す事は出来なかった。それは2人が作った条件だったから。

そこまで話すと、悟さんは枕元に置いている再生機を触り、あるディスクをセットする。何を聞かせてくれるのだろう。その録音したのを聞き驚いた。

『財閥でなくても良いから、良家のお嬢さんなら文句は言わない。今からでも遅くないから』

『けっ、アホ抜かすんじゃねえ』

『恋愛結婚なんか絶対に許さないぞ!』

『結婚が許せないと言うなら、子どもが生まれても許せないという事だよな』

『子どもって、まさか妊娠してるのか?』

『生まれても知らせないからな。あばよ』

その言葉に呟いていた。

「さすがお父ちゃん、強いな」

だけど、康介の母親である、優介のお婆ちゃんは生前分与で遺産を息子の康介に渡した事がきっかけで、親戚から狙われる事になった。

優介の母親は、交通事故に見せかけて殺された。いわゆる巻き込まれたんだよ。斎藤康介の遺産を少しでも多く貰うには相続する人間は1人でも少ない方が良いからな。

そして、父親も事故に見せかけて殺された。これで遺産は自分の物になる。そうほくそ笑んでいた。

だが、遺産は既に康介ではなく、彼の息子である斎藤優介名義になっていた。だから、親戚がこぞって優介を引き取ろうと躍起になっていたんだ。それは、もう凄まじかったよ。彼等は欲望の塊で、富を得たかったからね。

あと、法廷でのやりとりの相手が山口財閥のCEOだと分かった時の彼等は、手のひらを返したようにゴマすりをしてきた。

”優介君に、斎藤の名を捨てない様に伝えて下さい。お願い致します”とか、”優介君が女の子だったら、『御』と縁結べるのに”とか”優介君に性転換の治療をさせるか”とか色々と言われた。

だけど、いつの間にか優介は、あの家から居なくなっていた。

思わず悟さんの話を、俺は遮っていた。

「俺、居たよ」

「10日間ほど、ボスのマンションに居たんだろ」

「ああ、それね」

そして、優介は山口家に来た。で、現在に至るだ。

「お分かり?」

「めんどくさ……」

「でもね、優介の祖父母は、まだ生きてるよ。会いに行きたければ行けば良い。それは優介の自由だ。どうしたい?」

「お爺ちゃん、お婆ちゃんと会った事も無ければ、お父ちゃんもそんな話は全然してくれなかったんだ。それに結婚も子どもも許してないんでしょ。だから、俺は行かない」

「そう……」

「それとも、悟さんは行って欲しいの?」

「優介が行きたいと言うのなら、付いて行く」

「ううん、行かない。それに、今更行ってどうにかなるものではないでしょ。爺婆は生きてるという事だけ覚えとくよ」

「それもそうだな」

「待って。という事は……、友兄も知ってるの?」

「いや、知らせてない。調査の結果だけ知らせた。優介は山口家で預かるとね」

「そう。それなら友兄は俺の家の事、知らないんだね」

「知って欲しかった?」

「ううん」

「ボスが知っているのは、昔、あそこで暮らしていた幼馴染の斎藤康介と息子の優介だけ」

「そう、それなら良い」

「優介のお父さんは虐めっ子だったみたいだよ。幼稚園の時、ボスを虐めてたって」

「え、嘘だー」

「優介は人を虐めるなよ」

「大丈夫だよ。俺は虐めないから」

「私を虐めてるくせに」

「悟さんを? 違うでしょ、悟さんが俺を虐めてくるんだよ」

「そんな事を言うのなら、もう1回してやる」

さっきもしたのに、またエッチする気なのか。だから言ってた。

「良いけど、今度はコンド―ちゃんを付けてしてね」

「お前にも被せるよ」

「ん……」

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