可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 62

優介の気持ちも分かるが、ここは心を鬼にして悟は言い含めようとしていた。

「優介、私は皆と会いたいんだ」

「会えば良いよ。俺は友兄と会いたいから」

「連れて行けない」

「昌平さんが来るのでしょう?」

その言葉を聞いた悟は先手を打った。

「昌平は、ここに寝泊まりする。優介は毎日レストランで修行してるから、自分の食事は作って食べて欲しいと言ってあるんだ。

昌平の仕事はネット環境があれば、何処に居ても出来るからな。昌平は即答で快諾してくれたんだ。ボスによろしくって伝言も貰ってる。

頼むよ、優介。私は皆に会いたい。帰国して優介を抱いて、無事に日本に戻ってきたんだと癒されたいんだ」

「悟さん、卑怯だよ」

「何が?」

「どんなに言っても、俺に友兄と会わせないという風にしか聞こえない。そこまでして、俺を閉じ込めたいの?」

「閉じ込めるのではなくて」

「また会える、という可能性は無いんだよ」

言い含めようとしていたのに、その純粋な塊の涙目には負けてしまった。

「優介……。ごめん、もっと早くに言ってれば良かったな」

「そうだよ。急過ぎなんだから」

「でも、私は皆と会いたいんだ」

「だから?」

「連れて行けない。けど……」

優介は待っている。だが悟さんはパソコンを弄っている。

「悟さん、何をしてるの?」

「待て、待てよ」

「話をしてるのに、なんでパソコンつついてるのっ」

すると、違う声が何処からか聞こえてきた。

『え、なに、この声。悟、喧嘩なら切るぞ』

「へ?」

「ボスとチャット画面を繋いだ。連れて行けないけど、これで我慢して欲しい」

「友兄と?」

パソコンを覗くと、先ほどの顔写真と同じ顔をした友兄が映っている。思わずパソコンを抱いていたほどだ。

「友兄っ」

『優介か』

「会いたいよー」

『私も会いたいよ』

「悟さんが、そっちに行くって言って」

『ああ、うん。皆で会おうと話になって』

「俺も会いたい」

『ごめんな。仕事で忙しいんだ。来てくれても相手出来ないんだ』

「出来なくても」

『優介は、そんなにも私を思ってくれてるのか』

「そうだよ。俺にとって友兄は大事な人なんだからね」

『それは嬉しいな』

友兄の顔が、ふにゃと和らいだ。

「友兄、ノーベル賞取ったんだって? 凄いね、おめでとう」

『ありがとう』

「さっきね、パソコン検索して記事を読んだんた」

『そっか、なんか照れるな』

その照れ顔は昔を思い出させる。そんな時、電話なのか着信音が聞こえてきた。

『悪い、ちょっと待ってろ』

「うん」

メールだったのか、スマホを見ると微笑んでいる。何かを打ち込むと、こっちを向いてくれた。

『優介、何か飲み物を持ってこい』

「え、行って良いの?」

『話すのに喉が渇くだろう。20分しか時間取れないけど、飲みながら話そう』

「うん、ありがとう。話したい事、いっぱいいっぱい、いっぱーい、あるんだ」

パソコン画面を見ながらだけど、友兄とチャットを楽しんでいた。

友兄はスポーツドリンクを飲みながら、俺は悟さんが好んで飲んでいる緑茶のペットボトル2ℓ入りのを1本、そのまま口飲みしながら、悟さんのパソコンを使って話していた。

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