可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 67

ドンとなった友明は、その2時間ほどの間に、色々な人と会話を交わした。日本から『御』に付いて来た男性は、どことなく康介に似ている。思わず、その名を口にしていた。

「こう、す……け」

それを聞いた男性は、複雑そうな表情をしていた。

「友兄は、いつまでもお父ちゃんの事を思ってるんだね。嬉しいんだけど、でも、なんか複雑な気分だ……」

友兄、お父ちゃん? って、まさかと思い当たった友明は、優しく言ってきた。

「優介か。康介かと思ってしまったよ。よく似てる」

自分の名前を呼んでくれて嬉しくなった優介は、友明に抱きついた。

「友兄っ!」

よしよしと友明は優介を優しく背中をポンポンと叩いていた。

「元気そうだな。どうだ、悟との生活は?」

「うん。悟さんも優しいし、楽しいよ」

「それは良かったな」

「大学に行かせてくれたんだ。せめてもの恩返しを、これからしていこうと思ってるんだ」

「『御』は厳しいが、頑張ってる人間が好きな人だ。贔屓する時もあるが、目を掛けた人間には、とことん目を掛けてくれるからな。これからも、頑張れよ」

「うん。友兄も、元気で頑張ってね」

友明は溜息を吐いて、優介の頭をグリグリとしていた。

「優介! お前は、何度言えば分かるんだ。『うん』ではなく、『はい』だろっ!」

「はいっ! ごめんなさいっ!」

あはははっと悟さんが笑いながら、口を挟んでくる。

「まるで、あの時と一緒だね」

「あの時って、どんな時?」

悟さんは、友兄に抱き付いていた俺を剥がしながら言ってくる。

「優介が、うちに初めて来た時、君は『うん』のオンパレードで、ボスに頭をグリグリされて、今と同じことを言われた。君も、あの時と同じ言葉を言った」

御も、口を挟んできた。

「ああ……。たしかに、そうだったな。皆で笑ったもんだ」

友兄は、とんでもない事を言ってきた。

「お前は、あれから20年近く経っても、変わってないってことか」

「いやいや、変わったよ。好きな人も出来て、マナーとかも習って……。あ、そうだ。背も伸びたよ」

それを聞いた友兄と悟さんは同時に溜息を吐いた。友兄が呟く。

「そういや、天然なところは、しっかりと天然なままだな」

その言葉に、悟さんはこう応じた。

「大らかになった、と言って欲しかったな」

そんな時、優介は誰かに声を掛けられた。

「Hi Mr. I’m Suzan. Shall we dance?」(一緒に踊りましょう)

声を掛けられ驚いた優介は、目をぱちくりさせていた。

「え、み、me?」

「yes」(ええ、そうよ)

「sorry…I can not dancing」(ごめんなさい、踊りは苦手で)

すると、にっこり微笑んで、その女性は言った。

「Tha’s all right! I’m lead」(大丈夫よ。私がリードするから)

そう言われたが、どうしようと困っていた。友兄と悟さんは話しに夢中になっているけど、口を挟んでも良いよね。だから、その女性に言っていた。

「ちょ、just a minute」(ちょっと待ってくださいね)

「OK」

悟さんに聞いてみようと思い声を掛けた。

「悟さん」

「ん、あ、ちょっと待って。何、ボス?」

ボスは小声で悟に言う。

「で、優介の身体を開発して、自分のモノにしたって事か?」

それを聞き、悟は真っ赤になった。

「なっ! なんて事を。ボスッ!」

ハハハッと笑いながら、その場を後にした友明は、食い物ブースに移って行った。

なにしろ、優介から逐一、近況報告として話を聞かされているのだ。悟さんのは固くて大きくてとか、痛いのに、どうして気持ち良くなるのとか、友兄ならお医者さんだから人体について詳しいよねとか、色々と。

その度に苦笑して、誤魔化していたのだ。

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