可愛いと言わないで

可愛いと言わないで 72

二度目が終わり、ほっと一息付いた優介は、悟さんを抱きしめた。

「だけどね、昌平さんにはバレていたんだ。俺達が恋仲だって事は、屋敷の皆は知ってるし、俺が泣いてるのを知ってたみたいで。昌平さんは、働き過ぎだよと言ってくれたんだ。

でも、知り合いなんて居ないから、休みを取ってもどこにも行けれない。だけど、昌平さんが連れて行ってくれるって言ってくれたので、一緒に行く事にしたんだ。

友兄の所へ、オーストラリアへ一緒に行こうって、だから」

その言葉に思わず反応した悟は言っていた。

「1人でオーストラリアへ行こうとしてたのか? この私に黙って」

「あ、やっと声が聞けた。1人では無いよ、昌平さんも一緒」

「私が、オーストラリアに行きたくないと言った覚えはない」

「だって、そんな話をする時間なんて」

「だからって、そんな大事な事を1人で決めるなんて許さない。ここからパースまで何時間飛行機に乗るのか分かっているのか? 乗り継ぎだって」

「分かってるよ、分かってます。だから、そこまで俺は不安だったの。悟さんが研究所へ行って帰ってくるまで一日中を1人で居たの。

1ヶ月や2ヶ月ではなくそれ以上なんだよ。それに顔を見る事が出来ても週に2度か3度だし、しかも朝食の時だけだなんて寂しいよ。ねえ、そんなにも研究所が良いの?」

「DNAは、大学の時にゼミで取っていた」

「それだけ?」

「何が言いたい?」

「大学の時にしたから、今もしたいの? 俺と一緒に居るよりも?」

「そんなに寂しいのか?」

「当たり前だよ」

即答された言葉に、やっと悟は気が付いた。抱きしめると悟さんに抱き返されたので言っていた。

「ねえ、そんなにも研究所が良いの? それなら夜だけでも一緒に居て。こんな風に抱いて欲しいし、悟さんを感じていたい」

「お前ね……」

「何だよ?」

溜息を吐いて、悟さんは言ってくる。

「分かったよ。今すぐには無理だが、なんとか時間を調整してもらう」

「うん、よろしく♪」

優介の声が嬉しそうだ。だが、もう一つ聞きたい事がある。

「で、昌平の事は置いといて。どうして月末までなんだ?」

「だって、せっかく行くのだからと思って」

「疲れを取る為に?」

「それもあるけど、友兄と会うと疲れが飛んでいくと思ってね」

「優介……」

「あ、もちろん土産は買って帰るからね」

「優介っ」

「大丈夫だよ、昌平さんも居るし。それにジェットだから乗り継ぎも必要ない」

その言葉を聞き、悟は優介を殴っていた。

パンッ!

「さ、悟さん?」

「うん、良い具合に殴り痣が出来たな」

そこで気が付いた。

「なんで、そこまで行かせないつもりなの?」

「当たり前だろ。私だって行かないのに、誰がお前を1人で行かせるもんか」

「だから、昌平さんと」

「昌平が行きたいのなら行けば良い。だけど、優介。お前は駄目だ」

「なんで?」

「私を1人にするつもりか?」

「研究所があるでしょ?」

その優介の言葉に、悟は気が付いた。

「あんのやろっ!」

「違うの?」

「昌平の入れ知恵だな」

思わず言っていた。

「お仕置きが必要だって言ってた」

あ、やばっ。口を手で覆った優介は、悟さんの顔が怒り顔になっていくのを見ると慌てて言い添えた。

(昌平さん、ごめんなさーい)

「あのね、でもね、悟さん。俺は言ったんだよ。『その留守番は、お仕置きにはならないよ』ってね。ねえ、聞いてる? 悟さん?」

その日は久しぶりに悟さんの温もりを味わっていた。翌日、目が覚めると悟の部屋に居る事に気付くと、あるべき温もりが無い事に気が付いた。

着替えをする為に自分の部屋に戻る事にする。その戻る途中、1階から声が聞こえてくるので階段の上から覗くと、悟さんが昌平さんと話をしていた。

その話を聞くこともせず自分の部屋に戻ると、荷物を持ち3階の道場へと続く道を選び表に出る。リムジンが停まってるのを目にしたので荷物を預け、建物の裏口に回った。

息を吸い裏口の玄関ノブに手を掛け、開けると同時に言っていた。

「悟さんと昌平さん、おはようございます! 悟さん、これ持ってて」

そう言うと、手にしたものを悟に投げつける。

「いたっ……」

その声を聞くと何故だか溜飲が下がったので、言い切った。

「Trick or Treat !! お土産は買って帰るからね~」

すかさず昌平も言ってくる。

「ということで、私もTrick or Treat !! 優ちゃんを泣かせたんだ。その罰として、お仕置きは素直に受けるんだな。んで、優ちゃんの事は任せろっ」

「ま、待てっ! 優介、昌平。優介! 優介、戻ってこーい!!」

悟は上半身裸のままで2人の後を追って表通りに出るが、姿が見えない。

すると、一台のリムジンが目の前を通り去って行った。

そのリムジンの後部座席の窓は開けられていて、2人が「行ってきまーす」と言いながらバイバイと手を振っている。

その2人を乗せたリムジンを呆然と見送っていた。それと同時に自分に向けて投げられた優介のスマホが手から滑り落ちた。

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