君は腐れ縁であり運命の人

翌日。朝も7時半過ぎになると、怒鳴り声に聞こえる様な大声が聞こえてきた。恐らく徒歩20分以上の所から歩いてる登校班の人だろう。

「香織ちゃん。おっはよー!」

返事は無い。そりゃそうだろう、寝起きの悪い香織はギリギリに起きてくるからだ。7時40分になると、やっとのことで香織は起きてくる。

登校班グループで一緒に行く初日だから、集合場所まで母親と一緒に行く。昨日は職員室へ直接行くので、皆とは違う時間だったからだ。

集合場所へ行くと、既に皆が集まっていた。

そこで、先ずは子どもだけでクラスと名前だけ言って自己紹介する。

隆一と良も居たし、優人は裕也と手を繋いで仲良しをアピールしている。

同じ登校班には、他にも6年生が居た。

「福山夏雄。同じクラスだよ。よろしく」

「福山優三郎。君の2つ前の席だよ。よろしく。」

「ああ、あのハーフの前の席……」

「そうそう、あのハーフとは違う登校班だけど、途中から一緒になるよ。」

時間になると出発する子どもに親は声を掛けてくる。

「行ってらっしゃい」

子どもを見送ると、お母ちゃんは親同士での話し合いをするのだろう。チラッと後ろを見ると、談笑しているのが分かる。

5分ほど歩くと、あのハーフの姿が見えた。銀髪という事で目立つというのもあるが、彼は6年生にしては身長が高い。だからなのか、本当に目立っている。

苛められる事は無いのだろうか、それとも苛められても無視してるのかな。そう思っていた。

それから数日後。いつの間にか、俺の机と上履きに落書きがされていた。どういう意味なのか分からなかったが、香織や優人にも同様な落書きがされていたらしい。

香織には女子から、優人には男子から。始業式の日に、妬まれたみたいだ。俺は、あの2人の兄弟という事で絡まれたのかな。

俺としては、この手の虐めには慣れてるけど、あの2人はどうだろう。優人は大丈夫だろうが、香織は手が早いからな。相手を殴ったりしてないだろうか。

前の席に座ってるハーフ君が言ってくる。

「気になるなら先生に言う事をお勧めするね。それでも、ある程度経つと、またされるけどね。」

なるほど、こいつも同様な事をされた事があるのか。

気になる事をハーフ君に言っていた。

「どうして俺がされるのか分からないのだけどね。もしかして、あの2人の兄弟だからという理由なのかな?」

「それ、当たってると思うよ。」

その言葉に溜息が出ていた。

香織は父親似で、顔の造作もそっくりの為よく美人だと言われる。父親が有名人の為テレビとか出るから、からかわれる対象なのだが、当の本人は何とも思ってないのがミソだ。

俺は父親とは似てないが、どちらかと言うと母親似だ。ふっくらぎみな顔だから。香織とは二卵性の双子だ。

優人も父親似だが、顔の造作は違い丸顔でメガネ掛けているせいか理知的に見える。澄まし屋さんと、東京に居た時は言われてた。

だけど、俺達3人姉兄弟は、他人には言えない秘密がある。家庭の事情というものだ。

住んでる家には確固たるセキュリティに囲まれた門塀。生い茂った木々の真ん中には2階建ての家屋が建ち、その家屋の四隅の端には覗き部屋が、隠れ廊下を隔てた木々の中には地下付きの離れがある。

マスコミ避けの為だと、お母ちゃんは教えてくれたからだ。だから、お父ちゃんは家族を守る為、そして仕事の為、東京に住んでるという事も。

別にお父ちゃんと一緒に暮らさなくても楽しかった。

学校に慣れたのは1ヶ月も経った5月のGW明けだった。それまでは名前も覚えられなかったが、そのクラスの半分は福山さん、福山君だから良かった。

教科書への落書き、体操服への落書き等は、まだ可愛いものだった。東京とは違い、福岡の小学校の体操服は色味が無く、白一色はどうかと思っていたからだ。だから色味があって嬉しかったのだ。だけど、色味のセンスが悪く、どうにかならないかね。

教科書への落書きの対応は、俺は家に帰ると予備があるからまだ良い。なにしろ、教科書を貰ったら、それをそのままルーズリーフに丸写しして、それを覚えていく。だから、教科書への落書きも平気だった。

だが、香織は先生に言ったらしく、新しい教科書を貰っていた。それが、何度も何度も重なったせいか、先生も溜息を吐いて今度は俺に持ち掛けてくる。

「片割れは教科書に落書きをされて何度も貰い直してるが、そっちはどんな様子なんだ?」

俺は自分の教科書を見せて応えた。

「これですか?」

その教科書の落書きを、香織の担任だけでなく、俺の担任も見ると溜息を吐いてくる。

「どうして、君は何も言わないのかね?」

「俺は、教科書を貰った時点で自分用にルーズリーフに1冊を丸写ししてます。家では、自分の書き写した方で覚えていってますので、別にこれ位では騒ぎません。」

「ほう……、それならテストしてみようか。」

俺の担任は勝手に口頭テストをしてくるが、それに俺は答えていく。

「中学受験はしないのか?」

嫌味な言い方に反吐が出るが、相手は担任だ。

「しません。なにしろ、こんな時期だと間に合いませんので。それに、どうして虐められるのか。その理由が分かりません。教えて下さい。」

「それは、虐められる側にも問題があるのではないかな?」

「どんな事でしょうか?」

2人の担任は腕組みをして言ってくる。

「例えば、お高く留まってたり……」

「相手を見下したり……」

なんとなく分かった。

「分かりました。お芝居ですね。」

「は?」

「現行犯で捕まえないと、何も出来ませんね。用件は、それだけでしょうか?」

すると、香織の担任が言ってきた。

「あのなっ!ガキに、そう言い方をされるとムカつくんだよっ!」

その言葉で、俺は完全に理解した。

「分かりました。郷に入らずんば、郷に従え。という事ですね。でも、先生。この言い方は、東京で生まれ育った人間にとっては当たり前の事です。それでは、帰ります。失礼しました。」

職員室から出ると、壁に凭れて笑い転げてるハーフ君が居た。

「なに、楽しい事でもあったのか?」

「いや……、友明って、楽しいのな(笑)」

何の事を言われているのか分からないが、まあ楽しそうで良かったよ。

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