大学に入学したばかりの4月の、ある日。
友明は、龍三道場では合気道の師範をして指導しているのもあり、大学での教養科目である体育で、合気道を選んだ。
指導する教授は友明に言ってきた。
「君が生徒だと、私は指導する気はない。だから、する気はないかね?」
「私が、指導ですか?」
友明は、教授と大学の理事長達から話を受けて、学生達の了承が得るなら、とOKした。
体育の授業になると、学生が各々の得意分野で指導を受けようとする。それは、入学したての1年生から、医学部の6年生までだ。
教授から話を聞いた皆は、ジロッと友明を睨んでくる。友明の姿を見て納得する奴等も居たが、殆どが友明の事を知らない。その、知らない学生達が口を合わせて言ってくる。
「俺等は教授が指導するから、この合気道を取ったんだ。入学したてのひよっ子に、誰が指導を受けるもんか!」
「そうだ、そうだ。教授も、教授ですよ。どうして、あんな奴にやらすのですか?」
「なら、一度手合わせをお願いしようかな。新・指導者様。(ニヤ)」
「それも、そうだな。(ニヤニヤ)」
「誰が、弱い奴に教えを乞うものか!」
「たしかに、そうだよな。」
「覚悟しやがれっ!」
友明は、彼らの言い分も尤もだと思い、自分も言っていた。
「良いだろう。だが、喧嘩ではなく武術のみだ。」
「へっ、当然だっ」
だが、友明の力を知ってる奴等は乗ることはなくボヤいてる。
「この中に、あいつに勝てる奴が居るものか……」
「お前、あいつを知ってるのか?」
「知ってるよ。」
「どんなだ?」
「俺の通ってる道場で師範してる。」
「ほー! 道場で師範ね。澄ましやがって、この野郎っ!!」
友明の周りを、何十人もの男が囲む。それは、ガリから屈強とまでも見て取れる奴等だ。
「けっ、武術なら良いんだろ。」
だが、友明は一言だ。
「弱い奴ほど、口は達者と言うからな。」
「貴様っ!」
ブーイングばかりで埒が明かない。
ダンッ!!と、友明は道場の板の間を両脚で踏みしめた。
「腕に自信があるのなら、掛かってこいっ!」
「やっちまえっ!!」
「オーー!!」
合気道なのに、空手とか柔道とか少林寺など、他の武術も入り混じる。まるで、龍三先生の道場みたいだ。
友明は、確実に一発で倒していた。
医学部では人間の身体の弱点を最初に習うからだ。異種混合だが、こっちだって合気道だけではない。柔道もやってたが、少林寺もやっている。
まずは、この連中を納得させるのが一番だ。
そんな友明の様子を見ていた他の連中は、あっぱれ!という気持ちで見ていた。
「ほー、あいつは強いな。さすが、言うだけあって、出来る奴だな」
そんな道場に着いたばかりの遅刻した人間もいる。
「ぅん? あれ、友じゃん。あいつも、ここなのか……」
「友って言うのか、あいつ。」
「友明だよ、だから友。お前は誰だ?」
「村上洋一。入学したての、ピカピカの1年生だ。」
「なるほどね、頭の中も1年生か……」
「なんか言ったか? ところで、お前は誰だ、銀ピカ野郎。」
「豊。銀ピカなのはハーフだ。お前もハーフだろう、お喋り君。」
「まあ、お喋りとは、よく言われるけどな。日中のハーフだ。でも、よく分かったな。」
「まあね。」
そんな時、村上洋一は同じアパートに住んでいる一樹に声を掛けられる。
「ねえ、洋一。」
「なんだ、一樹。」
「彼、一人で大丈夫かな?」
「どうだろう。あ、銀ピカ君。友君だっけ、彼は強いの弱いの、どっち?」
「聞いてどうする。」
「助太刀しようかと。」
「見れば分かるだろ。怪我するぞ。」
「だとよ、一樹。」
「そうみたいだね。でも、彼は確実に当ててるね。」
「ああ、そうだな。ん、なんだ、あれ?」
「何が?」
誰かが、友明が倒した相手を引き摺って道場の隅に置いている。
「ああ、邪魔にならないように、ってか?」と、豊が。
「私も手伝おうかな。」と、一樹が。
「そうだな、あれぐらいなら手伝えるな。」と、洋一が。
30分ほど経つと終わったみたいだ。
友明の声が聞こえる。
「さあ、アップは終わった。ここからが本番だっ!」
「へ、今のがアップ?」
「凄いね。」
その時、いくつかの声が聞こえてきた。
「それなら、挑戦させてもらう!」
5人が、道場の真ん中に向かったが、すぐに5人はこっちに飛ばされてきた。
「さすがだわ。医学部1年の王偉強 (ワン・アンドリュー)。香港人だ。よろしく」
「くっそ……。少林寺なら負けないと思ったのに。同じく医学部1年の高瀬正孝」
「柔道の師範してるのに、柔道で負けるとは。同じく医学部1年の渡部優馬」
「得意の手刀で負けるとはな……。同じく医学部1年の山口悟」
そして、一番最初にぶっ倒れたのだろうと思える一人が這い出てきた。
「いやー、強い強い。この私が負けるとはね。医学部1年の小早川貴匡だ。よろしく」
そして、洋一と一樹も自己紹介した。
「医学部1年の村上洋一。よろしくね。」
「医学部1年の早瀬一樹です。君、強いね。」
そして、豊も。
「よっ! 友も、ここだとはね。やはり、私達は出会う為に生まれてきたんだね。」
そして、見た目の良いイケメン野郎が声を掛けてきた。
「何々、医学部だけで集まるの? 楽しそう。私も同じ医学部で、大久保潤也。君は?」
友明は全員を無視しようと思ったが、豊が居るのを見ると無視は出来ないだろうなと思い、溜息を吐くと仕方なく口を開いた。
「福山友明。それ以上は、そこの銀ピカハーフに聞いてくれ。」
「ふふん♪ 腐れ縁ってやつだな。それよりも、いい加減に名前で呼んでほしいな。」
「詳しい事は、そこに居る銀髪碧眼の長身の美男子に聞くんだな。」
「うん♪ ふぇっ! な、なにそれ、珍しく長い呼び名になってるじゃん。ねー、ともぉ。そこまで言うのだったら名前で呼んでよ~」
