君は腐れ縁であり運命の人

君は腐れ縁であり運命の人 25

それから数日後、友明の帰りを尾け、家まで見送っていた。

当然、友明は知っていたが、何をするでもない豊に疑問を持っていた。豊は友明を家まで送るという、自分の勝手に決めた日課を繰り返していた。

だが、豊は家に戻った友明が、また大学に戻ってきてる事に気が付いていなかった。

それが分かったのは、2年生に進級してからの事だった。

その月の学食が非常に美味しく評判が良いのを聞きつけた豊は、いつもはカフェで食べていたのだが学食で食べる事にしたのだ。

なるほど、これは最高に美味しい。評判が良いのは頷ける。栄養学的にも体にとってもバランスが良く考えられてるメニューだ。

たまたま近くに居た4人組の話が聞こえてきた。

「うん、やっぱり美味いわ。」

「ほんと、あいつは上手だよな。」

「仕込みは、あいつがやってるんだってな。」

「へぇ、あいつって昼間も学生だってな?」

「夜間だけでなく昼間もかよ。」

「噂によると、昼間は医学部だってさ。」

「へー。で、夜間は俺達と同じ栄養学かよ。」

「勉強好きな奴なのか。」

医学部?

豊の耳はダンボになっていた。医学部の奴が、夜間では栄養学を勉強してるのか? 朝から夜遅くまで大変な事だな。

「あ、見ろよ。あいつだ。」

「どれどれ。」

「あ、ほんとだ。」

「とーもー君。こっちおいでー」

「ば、ばかっ。何呼んでるんだよ。」

その声に反応して、とも君は近付いてきた。

「お疲れさん。今月は、君のメニューだってね。」

「うん。あ、食べてくれてるんだ?」

「うん、美味いよ。」

「ありがとう。」

「仕込みもしてるって本当?」

「最初の1週間だけだよ。」

「今は違うんだ?」

「違うよ。あ、そうだ。食べてみる?」

そう言って、とも君は何かをごそごそと出してテーブルの上に広げ置く。

「これね、さっきできたばかりなんだ。」

「おおっ!」

「んまそー!」

「食って良いの?」

「これは何だろう?」

4人が一口ずつ口に含む。

「さいこー!」

「酒が欲しくなる~」

「これって、とろの味噌漬け?」

そう聞かれ、友は応じている。

「そうだよ。7月のカフェのメニューにって言われてたんだけど、却下された。」

「まあ、カフェでは洋風が良いだろうな。」

「医学部って、お高くとまったお澄まし野郎の集まりかと思ってたんだけど……」

「俺もそう思ってた。だけど、それが友だなんて思いもしなかった。」

「知ってるのか?」

「こいつは、元々こっちの人間だ。幼稚園の時なんて、虐められっ子だったんだぜ。」

「そんなには見えない……」

豊は、目の前の事が信じられなかった。

友が、夜間で栄養学をしてるって? そりゃ、たしかに昼間は医学部だけど、夜は大人しく家に居たのではなかったのか?

何の為に見送っていると思ってるんだ。あれから、また大学に行ってたと言うのか? 悟が夜間でコンピュータ情報をやっているのは分かってる。友もだなんて。

友を含めた5人は、栄養学には必須の成分分析表を片手に、トロと味噌の微妙なやり取りを繰り広げている。

豊は腕時計を見ると午後の講義に行く時間だと分かると、立ち上がった。その際に、友に声を掛けてやる。

「友、そんな所に居たのか。そろそろ行くぞ。」

「午後は4限だけだから。」

「3限目は?」

「ない。」

良いなあ、私も休もうかな。いや、この3限目は休めないやと、ぶつぶつと独り言を言いながら、友を見ながら言っていた。

「それじゃ、4限目に。」

「ああ。」

それでも返事はしてくれた。それだけでも良しとしないといけないのに、寂しかった。

医学部と栄養学とでは、そんなにも表情が違うのか。とても楽しそうに成分がどうのこうのとか、カロチンとかビタミンとか、色々と話に花が咲いてる。

友、4限目が終わると、話がしたい。

学食の出入り口を出る時に、友の方を振り返り見ると、友は4人と一緒に楽しそうにまだ笑って話し合っている。

友、その笑顔は私だけに向けて欲しい。

友、好きだよ。

高校の時とは違う意味の「好き」という言葉。あの頃は気軽に言えていたが、今は違う。その一言を言いたいのだけど、言えずにいる。言えば、そこまでな感じがするからだ。

心の中で念じていた。

(友、私の方を見てくれ。)

だが、友は一度も振り返る事はしなかった。その様子を見ると思わず溜息を吐いていた。

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