君は腐れ縁であり運命の人

君は腐れ縁であり運命の人 26

4限目が終わると友に近付いて行った。

「友、ちょっと良いか?」

その言葉に、すかさず反応したサトルがユタカを戒める。

「ユタカ、ボスと呼べと決めただろう。決められ」

「分かったよ。ったく、煩いな……」

ボスは溜息を吐いて言ってくる。

「何か用事か?」

「ああ、話があるんだ。」

「どんな?」

「ここでは話せない。」

「昼間の事なら話すことはない。」

「違う。良の事だ。覚えてるだろ?」

「良って誰だ?」

それを聞いて(ったく、この忘れん坊が……)と思いながら言ってやる。

「福岡にある、福山さん家のお向かいにある、バイク野郎だ。」

「ああ、そっちの野郎か。切る、と言った筈だが?」

「そいつについて話があるんだ。できるなら、これからが良いのだが。」

友を大学の北門を出た所にあるカフェに連れて行き、話をする事にした。注文した紅茶が運ばれると、二口ほど飲み口の中を湿らせる。

「良は裁きを受けた。それを知ってもらいたいんだ。」

「裁きって?」

「あいつは死んだ。」

その言葉に、さすがの友明も反応した。

「今、なんて……」

「あいつは死んだんだ。良は……、あいつは退学になって福岡に戻った。家に帰ろうとしたらしいが、入れてくれずに、最初に友の家に、お前の家に行ったらしい。だけど、小母さんは拒否した。そして、夏の家に、『大勝』に行ったらしいが、おやっさんは相手にしなかった。最後に私の家に来たみたいだが、使用人も私の父も相手にはしなかった。

私は父から連絡を受けて福岡に戻ったのだけど、その時は既に虫の息だった。だけど、あいつは最後までお前の事を言っていた。『俺は、友が好きなんだ。小学校や中学校の頃が一番良かった』って、言ってた。

本音を言わせて貰うと、私が、この手で殺そうと思っていたんだ。

だけど、あいつは自殺した。あいつの家族は、あいつが死んだ事に対して厄介払いが早めに済んで良かったと言っていた。

でも……、でも私には分からない。

いくら義理でも、一緒に暮らしていた時期もあった筈だ。自分の血を引いてない子どもには欠片さえも思いはないのか? あいつの母親が泣いたのが、せめてもの救いだよ。

でも、あいつの義父と義弟は泣きもしなかった。まだ高校生だった私は、どの様に接すれば良かったんだ……」

そう言いながら自分の過去を思い出していた。

あの男は義理とは言っても一緒に暮らしたこともなければ、顔を合わせた事もあの時が初めてで、お互いが自己紹介をした事もない。それに、あの男は私を隊に放り込んでくれた奴だ。父から頂いたフルートを壊され、憎しみしかなかった。良とは違う。

だけど、あの家族は良に対して何かしらの思いはなかったのだろうか。友は黙ったまま何も言わないので、何を考えているのか分からない。

残りの紅茶を飲み切ると、言い続ける。

「だから、私は『友に伝えてやるから、言ってみろ』と言ったんだ。そしたら、『友が好きなんだ』と言っていた。私が友に伝えてやると言ったら、あいつは『よろしく』と言って目を瞑ったんだ。」

暫らく経って、友は言ってきた。

「あいつの家の事情は複雑だったからな。」

「ああ、そうだな。」

友は、自分の事を照らし合わせて考えていた。

まだ幼かった自分達3人は、母親の事を信じて疑わなかった。まさか、一滴も血が、DNAすらも繋がって無い、全くの無関係無接点の人だなんて。遺伝子のゼミを取っていなかったら、死ぬまで分からなかっただろう。恐らく、香織は何も知らない。優人はどうなのだろう。

それでも、お母ちゃんは怒る時は怒り、叱る時は叱ってくれた。一緒に泣いてくれたり、抱きしめてくれたり。

お母ちゃんは、私達3人の事をどう思ってるのだろう。去年は、香織も家を出て大阪の短大に行ったし。この春には優人も東京へ来てからは、お母ちゃんは一人で暮らしている。

あんな広い家で、一人っきり。

まさか母親だけでなく、父親も再婚だなんて思いもしなかったし。なにより、福岡に引っ越す寸前に婚姻届けを出していただなんて、思いもしなかった。複雑な家族関係だなって思っていたが、良の事を考えるとマシな方なんだなと思えてしまう。

何気なく頭に出てきた言葉を口にしていた。

「で、葬式は?」

何も言わない友が言ってきた言葉に、安堵の溜息を吐いた。

「したよ。葬式ぐらいならと言って、家族が3人共。そして、私もね。」

「最近は、シンプルなのが主流って言うからな。」

「ああ。でも、葬式してくれて良かったと思ったよ。」

「……れるかな」

「ん、なに?」

「私が死んだら葬式してくれるかな……」

「なに言ってるんだ。あの小母さんなら、真っ先に生き返らせる様な事をすると思うけどね。」

そう言うと、手で叩いたり抓ったり等のジェスチャーを加えて言ってやる。

「友、あんた何を呑気に寝てるのっ! ほら、起きなさいっ。起きるのよ、こらー、起きろっ!って言いながら、頬や尻を叩いたり抓ったりしながら」

「あー。やりそうだわ……」

「で、友は生き返る。」

「お母ちゃん痛いでしょ。何してくれるのっ」

「あんたが何時までも寝てるからでしょ。そろそろ起きて、夕食を作りなさい!」

「たまには作ってよね。お母ちゃん得意の味噌ドリアでよろしく。」

「み・味噌、ドリア? 何それ……」

「なんで、そこで止めるんだ? 豆腐を敷き詰めて、その上から味醂で薄めた味噌を掛けてグリーンピースとピッツアチーズを散りばめてオーブンで焼く。ほら、やって!」

「私に出来るわけないでしょっ! ってか、小母さん焼いてたんだ?」

「包丁使わなくて良いからな。」

「ほー……」

「お母ちゃん曰く、手抜き料理だとよ。」

「なるほど、でも豆腐かぁ。食べた感がしなさそう。」

「ダイエット食にはもってこいだよ。」

「うん、だな。」

「最近、その体に脂肪が付き過ぎて困ってるだろ?」

にやにやしながら友は言ってくる。

「べ、別に良いだろ。それに、じろじろ見んなっ! 食べ盛りの時期なんだよ。」

じろじろと見てくる友に、嬉しいのか何なのか分からない複雑な表情で返していた。

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