君は腐れ縁であり運命の人

君は腐れ縁であり運命の人 32

時は過ぎ、今宵はパーティ日和。

昼の12時に待ち合わせた男4人はランチを食べた後、タカを礼装させる為、3人がかりでスーツを決めていた。いい加減にしてほしくてタカは嘆いていた。

「なにこれ-。こんなの締め過ぎだし、暑苦しい。しかも、こんな物まで……」

ジュンヤは、そんなタカに言い切っていた。

「これ位で音を上げるな。モデルは、もっと大変なんだぞっ」

「私はモデルではない!」

「パーティでも色々とあるんだからな。今夜のは軽めだ。」

「えー……」

「予算は上下とアクセを合わせて総額10万なんだから」

「10万って言うから、10万持って来たんじゃないか。」

ユタカが割り込んできた。

「10万って安くない?」

「初心者なんだから、最初はそれ位で良いだろ。」

タカはサトルにヘルプ視線を向けて言ってくる。

「サトルのは幾らぐらい?」

溜息ついてサトルは口を開く。

「あのね、値段じゃないから……」

そう言うと、ジュンヤが言ってくる。

「ちなみに、私のは略礼装で。値段は幾らだろう?」

ユタカも言ってくる。

「私のも略礼装で値段なんて忘れた。」

サトルも乗っかる。

「私のも略礼装で値段なんて知らない。でも1着は持っておくと便利だよ。」

「着る機会なんて」

「あるよ。結婚式とか、ああ、大学の謝恩会とかね。」

ジュンヤも言ってくる。

「そうそう、付け襟にしておけば正装として着れる。だから黒色で付け襟型のを選んでるんだよ。私が着るのだったら、こんな黒や紺ではなくて」

「はいはい、そこまでにしてあげようよ。タカの頭には入らないよ。」

「それもそうか。」

サトルは助け船のつもりで付け足した。

「クラシックを聴きに行く時は礼装するでしょ? もしくは略礼装に。そういう時にも着れるよ」

「真っ黒な燕尾服なら持ってる。」

「燕尾服って……」

「舞台でチェロを弾く時は着るから。でも、こんなのは初めて……」

ジュンヤが声を掛けてくる。

「今度はどうだ?」

いったい何度目の「今度は」だろう。それでも、今迄のよりはマシかもしれないと思ったサトルとユタカはOKを出した。それから数時間後の18時半、やっと目的地に着いた。

その家のホールでは華やかなドレスに身を包んだ女性や、談笑を交わしている男性達が大勢いる。7月という暑い時期にも関わらず、大勢の若者が集まっている。

そんな連中を見て、タカは呟いてる。

「なんか浮いてる……」

サトルが、それに応じている。

「最初は誰でもそうだよ。」

目当ての人物が居るかどうかを確認しに行ったユタカとジュンヤが戻ってくるまで、そこを動くなと言われていた2人は、大人しく待っていた。だが、目の前のテーブルには食べ物が並んでいるのを目にしたタカは食べ物に手を出そうとしていた。タカの視線の先を見たサトルは、こういう場での食事は論外と戒め飲み物を頼んで飲んでいた。

なるほど、だから来る前に軽く食べて行くと言ってたのか。

2人で飲んでると、当然ながら女性が声を掛けてくる。

まるっきりのパーティー初心者のタカは受け答えをサトルに任せていた。サトルの受け答えを聞きながら、(へー、さすがはお坊ちゃまだな。パーティーは苦手だと言ってるくせに、会話はしてる。自分にはできないや)と内心思っていた。

すると、2人が戻って来た。

「居たよ。」

「それじゃ行きますか。」

「なあ、私は如何すればいい?」

「大丈夫、これから言うから。」

その時、声を掛けられた。

「あ、あの宜しければご一緒に……」

ユタカが微笑を張り付けて先に応えた。

「レディ、ありがとうございます。来たばかりですので、まだ挨拶をしてないのです。後ほど、顔を見かけたらまた声を掛けて下さいね。」

「は、はい。」

サトルよりも格段上の受け答えだ。サトルも微笑を張り付けていたが、それよりも上をいくスマートな物腰に自然な微笑だ。さすが社交界きってのプリンス。

一方、ジュンヤにも声を掛けられていたのだ。にこやか顔で断りの言葉を口にしていた。

「レディ、ありがとうございます。これから挨拶しに行こうと思ってますので、また見かけたら声を掛けて下さいね。」

「は、はい……」

さすがモデル。いつ何時も微笑を絶やさない。そういえば、昌平からも言われていたな。パーティーでは喋らなくても良いから常に微笑で居れば良いんだ、って。

タカはサトルを小突き言ってくる。

「なあ、あの2人って場慣れしてるよな。」

「まあ、社交界のプリンスとモデルだからね。」

「で、主人に挨拶って?」

「会場に着いたら、主催者への挨拶が先だよ。これは基本だからね、覚えといて。」

はいはい、まだ教科書を見ながらの勉強の方が性に合ってるわと、ぼやいていたタカだった。

4人揃って、主人の座ってる席に近付いていく。先頭を行くのはジュンヤで、ユタカは最後だ。その2人の間を、サトルとタカは歩いてる。サトルが小声で言ってくる。

「大丈夫だから、普通に歩いて。」

「あ、ああ。」

だけど、サトルの視界には、ある人が呆然としているのが映る。げ、なんでここに居るんだと思ったが、時遅しだった。

そのある人はサトルに近付いてくる。そんな様子を見て、サトルは額に手を置き溜息を吐く。

「へえ、珍しい事があるもんだな。あれほどパーティーは苦手だと言いながら来るとはねえ……」

「煩い。」

「それに、福岡の財閥の御曹司も居るし。他に」

ユタカは直ぐに応じた。

「先日はご丁寧な挨拶を頂きまして、ありがとうございました。」

「いえいえ、こちらこそ弟がお邪魔しました。今日は、御揃いで?」

「はい、4人共同じ大学の医学部です。」

「そうですか、それでは楽しんでくださいね。」

「ありがとうございます。それでは挨拶がまだですので。」

「そうなんですか。それは大変失礼致しました。」

タカは、サトルを小突いてくる。

「なあ、今の人ってサトルの兄?」

「長男だ。まさか、来てるとは思いもしなかったな。」

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