君は腐れ縁であり運命の人

女子の声が聞こえた。

「やだー。女子の顔を叩くなんて、紳士のする事ではないわよ。ねえ、そう思わない?」

そいつの方を向くと、今朝の顔と服装の女子だった。

「名前は?」

「誰の?」

「お宅の」

「なんで教えないといけないのよ。」

俺は微笑んで言った。

「知りたいから。」

すると、その子は顔を赤らめて教えてくれた。

「さ、斉藤美穂(さいとう みほ)。」

「教えてくれてありがとう。斉藤美穂さん。」

「あ、あの……」

何か言いたそうだったが無視した。

「香織。いつまでも泣くんじゃない。」

もう1回叩いてやった。

「なんで、そう何度も叩くの。私が何をしたって言うの?」

「お前がそうだから、こうやって虐められるんだよ。」

「どういう意味?」

「もっと簡単に言うと、お前は自分から友達を作ろうとしないからだろ。違うか?」

「友達って……」

「友達でなくても良い。仲間を作ろうとしないからだろ。」

「仲間……」

「遊び仲間でも良い。お前は、いや俺達は、無意識に東京に居た頃の感覚で居るからなんだ。それが悪いとは言わない。だけど、お喋り仲間でも欲しいと思ってないか? いいか、そこで隠れて聞いてる奴。お前もそうだ。何もかも、自分の思い通りになると思うな。隠れてこそこそと他人を虐める事しか出来ないのなら、俺は暴くぞ。俺を誰だと思ってる!」

「待ってよ。友、あんた、今は学校だよ。道場モードに入らないで!」

俺は、香織の顔を覗き込むようにして言ってやった。

「ごめんな。違うクラスだから、気付くのが遅くなって。あの天然で能天気なお喋り好きな元気印のお前が大人しく虐められてるなんて、思いもしなかったんだ。弟、失格だよな。ごめんな……」

「とも……」

今度は男子の声が聞こえてくる。

「麗しき姉弟愛だね。でもな、そういうのもムカつくんだよ。」

思わず、その言葉に即答していた。

「ムカつくって事は、仲良くなりたいという裏返しだろ。あんたは、俺達と仲良くなりたいんだろ? なあ、お前の黒幕は誰だ? 影に隠れて指示を出すだけだして、自分はのうのうとそれを見ている余裕を持っている奴か」

「お前の、そういう言い方もムカつくんだよっ! やれっ」

このクラスなのか、いや違うな。廊下からも入ってきたから、虐める専門の男子なんだろうな。それ等が囲んできた。

「とも……」

「お前は黙っとれ」

香織は泣きそうな表情で見てくる。

「なあ、あんたの黒幕を教えてくれると嬉しいんだけどな。」

「へっ。先生が来ないから、時間はたっぷりある。可愛がってやるぜ。」

「どこぞの安っぽいドラマの見過ぎか? それに、先生が来ないのは教師による朝の会だ。1時間目は、全学年とも自習だ。」

「なんで、お前がそれを知ってる。」

「なんでだろうねぇ。」

友明は、廊下には2クラス以上の生徒達が押し寄せてるのを感じ取ると、溜息を吐いた。こいつらは集団でないと何も出来ないのか。なら、頭を潰すだけで良い。

そう判断すると、口を開いた。

「なあ、こいつらの悪役さん。いや、ヘッド、頭と呼ばせて貰おうか。煽るだけ煽っておいて、自分は手を汚さないって事か? ま、それは大事な事だけどな。でも、虐めてる相手を仲間に入れようとはしないだろう。あんたは、こいつや俺の弟を虐めるだけでは飽き足らず、俺まで虐めてる。

ただ、あんたは3人に対して、同じ虐めをした。それが、ミスった原因だな。そうは思わないか、優二郎君。」

「ゆうさぶろう、だと言ってるだろ。全く、いい加減に名前を覚えるんだな。ああ、そう言えば他の連中にしても、名前呼びはしてないか。豊の事はハーフ君だしな。それに、どうして俺の名前がそこで出てくるんだ?」

「お前が、登校班の連中より早く来てるからだ。」

「は?」

「恐らく、お前はこう思ったんだろう。クラスの奴に虐めをしろと指示して、その結果が待ちくたびれずに、自分の目で見たかった。俺が、あんたに泣きつくことは決してないからな。」

「どういう意味だ?」

「俺の周りには人が居るからだ。ハーフ野郎に小児科野郎やバイク野郎に寿司野郎がな。」

それを耳にした4人はガックリと項垂れてる。内心はこう思っていることだろう。はあ……、あいつは何度言っても……。

優三郎は言ってくる。

「いい加減、名前呼びしてやれよ。あの4人も悲しく思ってるぞ。

「最初は、お前も仲間だと思っていたのだけどな。その内に分かってきたよ。あんたは頭が良いとな。」

「それは嬉しいな。」

「だけど、3人に同じ虐めをしてどうする? パーの頭をしてる奴なら何も考えないだろうが、俺は違うからな。」

さっきの奴が口を挟んできた。

「優三郎様、早く指示を。」

「こいつらを相手に生きてはおられないぞ。1時間目が終わる頃には、お前も、そこの女も死ぬ。ああ、お前の弟もな。それでも」

だが、友明は遮っていた。

「いや、俺が相手をしたいのは、お前だ。お前だけだ。」

「悪いが、俺は忙しい。」

「虐めの内容を変えるためにか?」

「なに?」

優三郎の眉が寄った。

「あんたは寂しいだけだろ。自分に寄ってくる奴等は、金や権力で黙らせる事が出来るから。そういったモノでは、人の心を従わせる事は出来ない。自分と同等の奴が周りに居ないから、俺をも虐める。あんたにとって、東京からの転入生というのは自分よりも高等な奴だと思ってるんだろうな。だから3人を虐めて、自分より劣ってるのを見て優越感を感じ取る。だけど、何回も言ってやるがな。あんたの虐めは低次元だ!」

「くそっ。この野郎っ」

優三郎は、俺に駆け寄ってくると殴りつけようとしている。

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