稽古が終わったある日、山口道場の道場主である山口悟は会社員の岡崎徹から相談を持ちかけられた。
はぁ……と溜息をつき言ってやる。
「で、岡崎君はどうしたいのかな?」
「お願いです。5人を助けて下さい。アドバイスがあれば下さい。やっとなれた常務秘書を50年も待たないといけないなんて、50年も経つと定年過ぎて90歳越えた爺ちゃんですよ。そんなヨボヨボになってまで待ちたくない」
話を持ち掛けられた悟は、パソコンで検索掛けてるパートナーに声を掛ける。
「優介、何か出てきたか?」
「引っ掛からないなあ……」
その優介に岡崎はお願いポーズを外すことなく聞く。
「優介、何かあれば教えて。」
だが、優介は師匠に返していた。
「ねえ悟さん、行ってみようよ。」
「え、能登に?」
「取り敢えず5人は無事なんだから、もう少し話が聞けるかも。」
その言葉に、岡崎の目は優介にヘルプ要請している。
「例えば?」
「その最初に落ちた人。結局二度ともその人が最初に落ちたのでしょ? 何でなのかなあ……」
「それもそうだね……」
「どこに、その異世界のスイッチがあるのか。それも気になる。」
その言葉に、悟は腰を上げた。
元々、そういう手の話は好きな悟だ。スマホを取り出し、長兄に連絡する。
『お兄ちゃんに用ですか?』
「昌平、御神龍って知ってるか?」
『龍神?』
「御神龍。御なる神の龍だ」
『だから龍神だろ。それがどうした?』
「行ってみないか?」
『何処へ?』
「能登半」島にあると言いたかったが、相手は最後まで聞いてくれない。しかも楽しそうに遮ってくれる。
『能登って、龍神の宮殿か? 行く行く、行って見たいっ。龍神の宮殿って50年に一度拝める事出来るんだよな。あれ、今年なのか。嬉しいっ。お兄ちゃんに楽しみをありがとぉっ。もちろん、ヘリで連れて行ってやる。そこは任せなさいっ!
おーい、新一。山登りの支度して能登に行くぞー!
― はあ、これから?』
昌平は龍神と言ってくるが、御神龍でなく龍神なのかと思うと、優介に言っていた。
「優介、”龍神の宮殿”で検索しろ。」
「はい。」
― 龍神の宮殿 ―
その言葉で岡崎も分かった。
地元の人間である及川は御神龍と呼んでるが、他地域では龍神と呼ぶ。
能登にある”龍神の宮殿”となると、50年に一度と言う話は本当だ。あの久和田常務は本当になんて事をしてくれたんだ。
耳元で声が聞こえる。
「聞いてたか?」
ビクッと身体が揺れる。
「ご、ごめんなさい。頭がオーバーヒートして……」
「まあ、それもそうだな。優介がプリントアウトしている。もし行くんだったら山登りの支度しろ。」
「はい。あ、あの、他にも連れて来て良いですか?」
「今は5人だから、あと7人までなら良いぞ。」
「あと3人です。お願いします。」
「じゃ。19時に、ここで。」
そう言われ、岡崎は4人に連絡した。
18時40分、山登りの恰好をした山口と峰岸と山岡を引き連れて来た。