ジェットはゆっくりと動く。
「ん?」
「動いてるって事は、そろそろかな。」
悟の長兄である昌平は、新一と一緒に2階にある中部屋の窓から外を覗いた。
1階では末っ子の悟が陣頭指揮を執っているので気が楽な昌平は、新一と一緒にのんびりしていた。
「ボス、あそこ見て。」
「なになに?」
「キラキラしているの見える?」
「おぉ! キンキンキラキラだなぁ。」
身を乗り出し観ていた、その2人は興奮気味な声を出す。
「宮殿が見えたぞー」
その声に、1階に居た皆は反応する。
「え、もう?」
「キラキラと輝いてる!」
すごく興奮しているのが分かるご機嫌な声だ。
「昌平さん、それはどの辺りが輝いてるの?」
「んー……。玄関。入り口かなあ?」
ちょっと上がってくると言うと、及川兄弟は2階に上がってきた。
輝いてる箇所を確認して声を掛ける。
「昌平さん、お願いがあるのですが。」
「無理な事でないなら良いけど。」
「大丈夫。あのね……」
そのお願いに乗った昌平は乗り気だ。
「それでいいなら、良いよ。」
「お願いします。」
「はーい、気を付けて。」
「ありがとうございます。」
「新一も気を付けろよ。」
「ああ、行ってくる。」
体格が良さそうなジェットクルーと新一を引き連れて及川兄弟はジェットから飛び降りた。
及川弟はクルー2人を引き連れて、最初に塊になっている4人を確保したが、なにやら文句を言ってくる。
だが、及川弟は気が付くのが一瞬遅れた。
「待って!」
「煩いっ、あいつは俺の宝物なんだ。囮にすんじゃねえっ」
「囮じゃなく、君っ」
その人は大声を出して駆け上っていった。それを見た及川弟は、宮殿近くに陣取っていた兄の所に走り寄って行く。
「嘘だろ、激しい奴だなあ。」
「ごめん、もう少しだったんだけど……」
「仕方ない。でも3人は助けたってこ……、ん?」
「え、嘘……」
見ると、他の3人はクルー相手に禁蹴りを食らわして駆け上っている。
「くそったれ。こうなると宮殿から入るか。」
「それなら武器庫だな。」
「私は私室に入ってやる。」
「気を付けろよ。」
「そっちもな。」
その時、違う声が割ってくる。
「私も連れて行け。」
悟の声に涼の弟は驚いてる。
「わっ」
「来ると思ってたよ。」
「こんな話、逃す手はない。」
「お前、こんなの好きだよな。」
「まあね。」
5人の漫才なのか、それが終わると同時に目の前に躍り出てやる。
「時間稼ぎありがとう。お蔭で、今迄に無く楽に掴まえることができた。」
「え、何……」
「良いか。5人共伏せろっ」
伏せると物凄く眩しい金色が差し込んできて、金一色になり明るくなった。(さすが昌平さんのジェットだ。)と感心していた。
今度は金色からじわじわとだが、それでも次の色になる様にグラデーションになっていく。(いや、グラデーションするとは。そこまでしなくて良いから、次のもやって)
そう思ってると、これまた強烈な2回目がきた。
今度は紫色の光線だ。(顔を伏せてて良かった……)と思いながら1,2,3と心の中でカウントを取っていく。「5」になると、明るく強い眩いけれど優しいオレンジ色の光が曇った紫の空気に一筋の光の様に差し込んでくる。
(やっぱり人力の明かりより、ジェットの明かりの方が強くて強力だな)