※優介視点※
その言葉通り、2分も経たない内に処置室から出てきた。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
悟さんに抱き付くと抱きしめられ、不安だった気持ちが和らいでいく。
「おか……り、なさ」
「優介……」
白衣を脱ごうとしてるのかどうなのか分からないが、手を離される。嫌だと思って抵抗していたら、ボタンを外しただけで白衣の中に包み込まれた。
「さと……」
「たたいま、優介。」
「おかえりなさい。」
ぎゅうっと抱きしめられる。
言葉は無いけれど、この温もりが嬉しい。胸に耳を当てると、悟さんの鼓動が聞こえてくる。
ああ、安心する。もっと、抱いていて。もっと、抱きしめて。
ゆったりとした口調で声を掛けてくる。
「優介。」
「ん……」
「ゆっくりして帰ろうな。」
「うん。ん、ゆっくりって?」
悟さんの顔を仰ぎ見ると何やら嬉しそうだ。
「せっかく能登まで来たんだ。レンタカー借りて2,3日掛けて東京に帰ろう。」
「嬉しい。2人で旅行だ!」
「温泉に浸かってゆっくりして、優介にも見せてあげる。」
「何を?」
「クルーが撮影した”龍神の封印”映像。ダビングしてもらった。」
「わあっ、楽しみだあ。」
「それに、ほら。これ土産だよ。」
「え、土産?」
龍神の宮殿の私室に設置された武器庫から攫った物だ。
金一色に彩られ、柄には虹色の宝玉が2つぶら下がっているダガーを見せる。
「ふわぁ……! 綺麗だ……」
「優介への土産だよ。それに、宝玉が付いてるのは御守りになるんだって。」
「御守りになるんだ。ありがとう。嬉しい。あ、悟さんのは」
「私のはこれだ。」
首に掛けた物と弾倉から弾を引き抜き見せてやる。
「俺のと同じだ。ペアだなんて嬉しいな。弾も何もかも、全部金色なんだね。」
「ああ。地下の武器庫より私室の武器庫の方に殺傷能力の強いのがあったからな。」
「皆して心配してたんだよ。」
「ごめん。」
「無事で良かった。」
今度は背に腕を回して抱きしめた。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
悟さんの温もりを感じ心臓の音を聞いていると、自分の気持ちもゆったりとしてきた。そんな時、声が掛かる。
「優介、そこに居たんだ。あのね、あ……、師匠」
仕方なく、悟さんの身体から離れる。
「徹、どうしたの?」
「ちょっと待って。師匠お帰りなさい。優介は1人だけ言い切ってましたよ。」
「何て?」
「皆が、もう駄目だと言ってるのに、優介だけ『生きてる、死んでない』と言い切ってたんです。」
「へえ、優介は私を信じてくれてるんだな。」
悟さんのニヤついて嬉しそうな表情と声に、徹に噛みついていた。
「徹、言わなくて良いっ!」
「まあまあ。でも、本当に良かった。あのね、優介。これから私の上司が入院している所に行くんだ。それを言いたかったんだ。」
「ここでなく、違う病院なの?」
「うん、総合病院だよ。」
「そう。お大事に。」
「ありがとう。それじゃ、また。」
「徹も気を付けてね。」
「ありがとっ」
その声に、悟さんはポケットの中に手を突っ込み取り出す。
「これやる。」
「え、何ですか?」
「龍の宮殿から貰ったものだ。」
「まさか勝手に……」
「漁り放題だったぞ。」
俺は、その言葉に思わず反応していた。
「ちょっと悟さん」
唖然としていた。だけど悟さんは、何食わぬ顔で付け足してくる。
「その宝玉付きは御守りになるから身に付けた方が良いぞ。」
先ほどの言葉に笑っていた徹は素直にこう返事していた。
「ありがとうございます。頂きます。」
なんかムカついたので、俺は悟さんに言っていた。
「もう……! いたずらっ子みたいな事をしないでくださいね!」