ヒロは、以前にもまして私に纏わり付いて来る様になった。
「道場へ行きます」
「頑張って来いよ」
「マルクもです」
「私はスポーツは向いてないんだ」
「色々なスポーツがあるので、やりたい事を言えば良いと思います」
「ヒロ、私は」
「僕も……、私も嫌だけど、マルクは一緒に乗り越えていこうと言ってくれた。あの言葉がとても嬉しくて、だからマルクと一緒に居たいんだ」
「それは嬉しいな」
たしかに言った。
あんな奴等に取られたくなくて、私の方を向いて欲しくて。
だが、スポーツというのは、どうしても無理なんだ。ヒロは諦めというのを知らないみたいだ。
「マルクはサッカーとかバスケットボールが好きですよね?」
「見るのが好きなんだ」
「それなら見に来て」
「ああ、それなら良いよ」
「言質、頂きました」
「へ、言質って……」
ヒロに手を引っ張られ、道場へと向かう。
リューゾーが口を開く前に、ヒロは言っていた。
「たまにはバスケットボールをしたいです」
その言葉に、皆は驚いてる。
「博人がバスケ?」と訝しそうに聞いてくるのはリョーイチ。
「たまには武術以外をしたいよな」と同意してくるのはキョージだ。
溜息吐いて、リューゾーは折れてくれた。
「分かりました。バスケにしましょう。でも、そうなると人数が足りない……」
そんな時、ワダが口を挟んできた。
「マルク様も居らっしゃるし、私もやりたいです。それなら3VS3で、丁度良いのでは?」
という事で、龍三組にはリョーイチとキョージが入り、ワダ組にはマルクとヒロト。
リョーイチはマルクに声を掛ける。
「マルク」
「何だ?」
「私は来年、日本に帰るんだ」
「来年……」
「うん。それまでよろしくね。でも、今日のバスケは負けないからね」
「こっちこそ負けないからな。ヒロ、ボール取られるなよ」
「任せて」
勝ったのはワダ組だった。
「くそぉー……」と頭の上に両手を置き掻き毟ってるのはリューゾーだ。
「何故、負けたっ」と喚いてるのはリョーイチだ。
「博人が、あんなにすばしっこいとか嘘だろっ」と、キョージも喚いていた。
「それ言うならマルクだろっ。今迄、運動には見向きもしなかったのに、何でっ」
「それもそうか……」
嬉しそうにワダは言ってくる。
「博人様はバスケしている方が生き生きしてますね」
「楽しいよ」
今度はマルクに言ってる。
「マルク様もね」
「今迄は見るだけだったけどね。でも、楽しかった」
その言葉に、ヒロトは思わず言っていた。
「でしょ。今のマルクの顔ってニコニコしてるよ」
「ヒロが頑張ってくれたお蔭で勝てたからな」
「チームワークが良かったんだよ」
「そうだな」
そんな2人を、仄々と見ていたリューゾーとワダだった。