お気に入りの6人を連れてシェリーの家へ馬を走らせる。
門は閉まっているので塀に沿って囲みを歩くと、数本の木が倒れて梯子状態になっている。なるほど、この木を伝って中に入ったのか。
シェリーは自分の家を貧乏貴族と言ってるが、銃が一番の金目の物だ。
自分の手元に置いてるのは護身銃で、主人は出張して修理や手入れをしている。だから誰かのを預かる事も無い。という事は、別邸だな。
最初に別邸に行くか。
森の中に入ると死体が無造作に置かれている。道すがら、人が死んでいる。まるで別邸に案内されているみたいだ。
まさか、その泥棒は別邸の事をも知ってたのか。
別邸のドアが開いている。
意を決して入ろうと思ったが、側付の1人であるフィルが首を横に振る。
この中に居るのか。
フィルは私を押し留め中に入った。
「アロー。ムッシュ、頼みたい物があるのですが」
何の返事も無い。
フィルの声しか聞こえない。
「ムッシュ……」
数分後、フィルは3人の男を後ろ手で縛り、女性を肩に担いで出てきた。
「一体何だ……」
「これはこれは」
「ジュニアが何の用かな」
その言葉で分かった。
「なるほど。泥棒は、この3人か」
馬から降りて女性に近付くと、脈拍を取らなくても死んでいるのが分かった。
その3人に「娘が居たはずだが」と声を掛けてやると、順々に返してくる。
「ああ、その娘はどっかへ逃げたぞ」
「本宅から来たみたいだけど、ちょうど、この女をヤッてたからなあ」
「美人だったよなあ、惜しい事をした」
こいつらシェリーの母親を3人で強姦したのか。
シェリーもそうだが、シェリーの母サリーもイギリス人で、私を自分の子同然に可愛がってくれてたものだ。そのサリーを、こんなにして……。
側に居た側付に指示を出す。
「この3人を縛れ」
「はい」
と返事をすると、縛るだけでなく目隠しをさせ猿ぐつわまで噛ませてる。
「サリー、シェリーは元気にピンピンしてるよ」
正門から本宅へ入ると、違う3人が縛られている。
なるほど泥棒は6人で二手に分かれて襲ったというわけだ。
「マルク様、何故……」
「ヘル、申し訳ない。私がもっと早く着いていたら」
何かを感じ取ったのだろう。
「まさか、あの子は」
「奥方は、こちらに」
「あの子はっ」
小声で耳打ちしてやる。
「大丈夫です。私の邸に居ます」
「そう、良かった」
見るからに安堵した表情のヘルに聞く。
「ところでヘル。心当たりは?」
「こいつ等の狙いは、あの子なんだ」
「え?」
「私が縁談を即答で断ったから、こいつ等を送り込んできた」
「縁談?」
「あのじゃじゃ馬に結婚なんて、まだ早い。だから断ったんだ。それが、このザマだ」
まさか、あのシェリーに。じゃじゃ馬云々の点は認めるが、その縁談相手は誰なんだ。
「立ち入った事を聞くが、その相手は誰なんだ」
「東の守りの息子」
「カールか」
「そうです。今迄はそぶりも見せなかったのに、何で今頃……」
カールは、以前はよくマドリーヌ姉様を追い回していた。結婚して子どもが居てもだ。それに、シェリーは姉様に似ている。そこで気が付いた。カールは美人に目が無いって事に。
「久しぶりにシェリーに会って驚いたんだ。シェリーは美人になったね」
「フランスに3年ですが留学してたんです。数日前、留学先から完全帰国して来た時は、サリーもそうだが私も驚いたものですよ」
「おしとやかになったのかなあ」
「どうだか」
その言葉に2人して笑っていた。
フランスに行ってたのか、なるほどと納得した。