お気に入りの側付6人と使用人3人を連れて行く。
使用人は日替わりで来てもらい、シェリーが出来ない事をして貰う。そのシェリーは立てない動けないだけで、他は出来るのだ。
だが、一番の難関は入浴。その時は使用人に手伝って貰う。
「なんか、お嬢様になった気分」
「グスタフォー家のお嬢様だろ」
「そうだけどね」
でも分かるよ、その気持ち。
それから1ヶ月もしない内に、何も無い貧乏貴族の家に誰かが侵入してきた。
「シェリー、居るかい?」
この声はカールか。どうやって入ったきたのだろう。まさか、あの6人は無能なのか。
そう思いドアを開けると目隠しをされ後ろ手に縛られているボサボサ髪の、何処から見てもイケメンとは言い難い状態のカールが立っていた。
そうか、カールは自分の現状がどうなっているのか分かって無いって事なんだな。
「シェリー?」
「あいつは母親を亡くし傷心に明け暮れている。そんな時に来るのは自分を印象付けたいという事なのかな」
「え、この声ってマルク?」
「カール。お前との縁談は無しになった筈だ。そうだろう」
「違う。今日は、その縁談を進める為に来たんだ。マルクに関係ない」
「大いにあるね。シェリーの父親は私に任せてくれたんだ」
「父親は、ヘルは何処に居るんだ? 話を」
「する必要ない」
「いいか、マルク。私は」
言いたい事は分かるので遮ってやる。
「お前は昔から美人に目が無かったからな。私の姉を追い回し、今度はシェリー。そこまでして美人が良いのかっ」
カールはニヤついたのか、口元が緩んでいる。とんでもない事を言ってきた。
「お前の姉貴は弟思いだよな。お前の名前を出すと、直ぐに来た。腹が立ってエッチしたんだけど、俺を噛んだり蹴ってくれたから殴ってやったんだけど、その時に走って逃げてった。その後を追いかけたら自分で車の前に飛び出した。その時に、向かい側にお前が居るのを見て、してやったりな気分になったもんだ」
その言葉に驚いた。
「な……に……」
「ほら、美人薄命と言うだろ。やっぱり美人は良いよな」
「マドリーヌは事故死でなく、お前が殺したのか……」
「殺してないよ」
「殺したのも同然な事だ」
そこで気が付いた。
「で、今度はシェリーか」
「殺さないよ」
「当たり前だ」
「シェリーは何処? 私はシェリーに会いたくて来たんだ。お前の所では無い」
「あいつは私の所に居る」
「なら連れて帰る。シェリーを出せ」
こいつは分かって無いのか。ここがグスタフォー家だという事に。この6人は、どれぐらいの間、こいつを木々から木々へと連れ回したのだろう。まあ、あのふっくらで艶々髪のイケメンを鼻にかけてる奴がボサボサ髪になって顔は擦り傷だらけになってるからな。
カールを囲むように立っている側付に声を掛ける。
「こいつを自然区域に立たせろ」
その自然区域という言葉に反応したカールの顔は、顔色が青くなり強張っている。
「自然って、何をする気だ」
「シェリーの父親は6人の泥棒を自然区域に立たせた。猿ぐつわを噛ませ目隠しを外してな。ここまで言えば、お前も分かるだろ」
「泥棒って……」
「サリーを殺し、シェリーを東に連れてこいと言われた奴等だ」
「サリーを殺した? そんな事は一言も……、あ、それじゃ戻ってこなかったのは」
「その耐久戦に耐えられなくなり6人はあっと言う間だったみたいだ。私は、その現場を見てなくてね。お前はどうかな」
「それなら、なおさらシェリーに会わせろっ。死ぬ前に」
「あいつを抱くってか」
「当たり前だっ。あんな美人、他にはいないからなっ」
「まあ、あいつが美人だというのは私も思うよ」
「だろう」
「だが、あいつに手を出すのは許さない」
「20歳を過ぎれば、誰でもエッチは経験済みだ。それにシェリーの父親には秘密にしておけば良いんだ」
「それは出来ないな」
すると、カチッと撃鉄を起こす音が聞こえた。