ヘル・グスタフォーは怖い顔をして言ってくる。
「マルク様」
「ヘル・グスタフォー。貴方は獣を知ってたのですね」
「マルク様にもお知らせしましたよ」
「でも、知らなかった」
「書類をお渡しお渡しいたしましたが」
「書類?」
「読まれてないのですか?」
言葉に窮してしまったら、ヘル・グスタフォーは溜息を吐いてきた。
「はあ……、もう良いです」
気を取り直したヘル・グスタフォーは言ってきた。
「獣は巣を作ってます。東の別邸から西の出入り口まで、南の方には無いですが、あの辺一帯を燃やして全滅させた方が良いです」
「そんな事をしたら」
「本当に書類を読まれてないのですね」
ヘル・グスタフォーは私に反論の余地を与えてくれなかった。
「なぜ東の別邸があるのか。それは、あの邸の地下がシェルターになってるからです。あの邸を含めて、私が住んでいた本宅まで燃やして下さい。地下に向けてガスを放出させて魔が嫌う火の力を注入してやるのです。あいつ等は地上に住んでるのではなく、地下に、地中に潜り住んでいるのです。住処を無くさない限り、根絶やしには出来ません。そして木々も伐れば良いのです。 古き物をと仰らっれるかも知れませんが、古き物は古き物として自分の心の中にあれば良い。新しき物を育てる事をしていきましょう。 ですから、良いですか。マルク様。 私がお渡しした書類を読んで実行に移して下さい。 とにかく、東も居なくなった今、東の別邸から西の本宅まで隈なく燃やして下さい。地下に穴を見つけたらガスを注入して火の回りを良くして下さい。そして」
どうやらヘル・グスタフォーは語らすと、とめどなく語る人物だと分かった。
ワダ2号だな。
まだグスタフォーだけだから良いけど、この場にワダも居ると耐えられないだろう。ワダにとれば楽しく語らいの出来る相手だろうな。
そんな私に、グスタフォーは声を掛けてくる。
「マルク様、聞いてらっしゃいますか?」
「聞いてます」
「それでは仰って下さい」
「は?」
「どれほど理解されてらっしゃるのか、それを知りたいので」
「え、とぉ……。根絶やしするので、一帯を燃やす」
「はい。それと?」
「地上だけでなく地中にもある住処を忘れない」
「はい。それと?」
前言撤回。グスタフォーは、まるっきりワダと同じだ。この場にワダが居ないだけマシだと思わないといけない。
「マルク様?」
「ヘル・グスタフォーが指揮する事」
「え、私がですか?」
「そうだ」
「なるほど。マルク様の頭の中の容量を超えて覚えてらっしゃらないという事ですね」
思わず叫んでいた。
「違うっ」
「何が違うのですか?」
「守りのリーダーをしてるのだから、適任者はヘル・グスタフォーだなと思って」
「畏まりました。そういう事にしておきましょう」
まったく、本当にワダやリューゾーと同じだ。
理詰めでくる奴だなあ。ああ、だからシェリーはフランスに出たのか。