側付20人に働いて貰い、穴という穴を見つけてガスを注入していく。注入が終わるとオイルを撒き散らし最後に火を付ける。広大な区域は三昼夜掛かって燃え尽きた。地面は無くなり、獣の燃えた残骸があった。
最後の火が燻り消えると、南の守りの3兄弟は口を開いた。
「お疲れ様」
「これで、やっと安心して寝れるな」
「脅かされる事も無い」
その3人に聞いてみた。
「ここをどうしたら良いと思う?」
「んー、そうだなあ。セメントを流して公園にするとか」
その時、ヘル・グスタフォーの声が飛び込んできた。
「マルク様、ヘリポートにされてはいかがでしょう?」
「ヘリポート?」
「はい。世界に散り散りになっている者たちが来易い様にです。空港ではなく、ここにヘリやジェットを置いて貰うのです」
「そうだなあ、それには管制塔が必要だな」と、リューゾーの声が聞こえてくる。
「技師も必要ですね」と、ワダの声が応じていた。
するとエドが口を挟んできた。
「楽器を演奏出来たら良いな」
その言葉に答えたのはヒロだった。
「そうだね、一緒に演奏したいよね」
何やら2人で音楽の話をしだした。
「エドー。一緒に演奏しようよ」
「おお♪ それじゃ、私のバスとデュエットしようか」
「うん。エドのバスって、凄く安心できるよね。まるで、大地みたいだ」
「そうか?」
「うん。大地が無いと人間って歩けないでしょ」
「ありがとう。それじゃ、ヒロのバイオリンは人間ではなくて、空だな」
その言葉に対してヒロは嬉しそうに返していた。
「それなら、他の楽器が人間であり、動物だね」
「そうだな」
「エド…
「なに?」
「いつになるか分からないけど、その時は一緒に演ろうよ。他の楽器と一緒に」
「そうだな。その日が楽しみだな」
そんな2人に言ってやる。
「音楽だけで生きてけるものか。お前等は、お気楽でいいよな。能天気野郎」
そして、ヒロが日本に帰国するまでに公園とヘリポートと音楽ホールが完成した。
余りにも広すぎるので、エドを始め、甥っ子であるリョーイチ、キョージ、ヒロ、アンソニーの屋敷も建築した。
「ヒロ。一番最初の演奏者としてバイオリンを聴かせてくれないか?」
「良いの?」
「ああ、お前のが聴きたいんだ」
「嬉しい。最高に嬉しいよ。ありがとう、マルク」
ヒロのリサイタル。
完成したばかりの音楽ホールで演奏してもらい、聴衆は私だけだ。
とても贅沢で、最高に気持ち良かった。
「マルク、ありがとう」
「私の方こそ、ありかとう。とても幸せな時間を過ごさせて貰った。素晴らしい演奏を聴かせてくれてありがとう」
素直に言うと、ヒロは照れていた。
「嬉しい。なんか照れるな……」
可愛いと思い、抱きしめていた。
お姉様やシェリーとは違う。
ましてや息子ニールとは違う意味で、大切な者。
「ヒロ……」
「なあに?」
「日本に帰っても元気でな」
「うん。マルクも元気でね」
その後、ヒロは大学の長期休暇を利用して1年に1回、ドイツに遊びに来てくれるようになった。そして、大学を卒業後は東京でドクターをした後、ドイツで5年間の契約を結んだ。