そんな幸せそうなヒロを見てると何かムカつく。
そう思うと、目を細めて問いただした。
「ヒロト。その人は、ヒロトの事を知ってるの?教えたの?」
「え……。私の事?」
「この家だよ。その女性は、もしかしたら財産狙いかもしれないんだよ? 教えて、何処の誰? この家に相応しいのかどうかを調べてやる」
ヒロは、きっぱりと即答してきた。
「嫌だ。私は、自分の意思で好きになったんだ。両想いになるまで色々とあったんだよ。 それに財産狙いではない。なんで、そういう事を言うんだっ」
「ヒロッ!」
「それに、マルク。間違ってるぞ」
「何がだ?」
「私の恋人は女性ではなく、男性だっ!」
「はあっ?」
聞き慣れない言葉を聞いた私は目を大きく見開いていた。
あまりにもショックが大きすぎた。
ヒロトの口から衝撃な言葉を聞いて、驚きのあまり暫らくの間は口がきけないでいた。
「ヒロ……。お、お前、お前まで、キョージと同じに……」
「マルク。私はね、本当に色々とあったんだよ。もう、あんな思いはしたくない。 あんなにも、誰かを助けたい、守りたい、と思ったのは初めての事だったんだ。自分は無力だ、と本気で思ったものだ。祈る事しか出来なかった…。 だから、私はエントリーから外して貰いたい。そういう事も言おうと思って来たんだ」
頭が回らない。
だけど、その”エントリー”と言う言葉に反応していた。
「ヒロ……。あの方は、お会いにはなられない。でも、そのエントリーの事は伝えておいてやる」
「自分で言いたいんだ」
「分かった。それよりも、付き合って欲しいな」
「北欧以外なら」
その言葉に苦笑していた。
「ランチを付き合って欲しいんだけどな」
「ああ、それなら喜んで」
ヒロトは日本では辛い事などもあったのか。
だから、この数年で、こんな風に変わったのか。あの冷淡で何事にも動じなかった奴が、好きな奴が出来て、自分は無力だとまでも思えてしまうほどに……。
だが、これが女性なら寝取ってやろうかとも思ったのだが、男性とはね。
だが、これで確実に1人は減った。
親族内での殺し合いは避けたかったのだが、ヒロトは生かしといてやるよ。
オペ・ドクとしての腕は良いからな。
それに、直系の孫の中では、私に一番懐いてくれている。
私の最も大好きな、親愛なる大事な長姉様の血を色濃く継いだヒロト。
ヒロトを女装させると、お姉様に似るだろうな。
マドリーヌ姉様。
貴方は、転生されたのだろうか。
願わくば、来世では夫婦として一緒に居たい。
貴方の子供はゲイになった。
もう、私の敵ではない。
私はヒロの恋愛を応援するよ。
口は出さない、文句も言わない。
ヒロが、それで良いのなら私は何も言わないし、何もしない。
今まで通りに接するだけだ。
他2人はゲイだし、残るはリョーイチ。
だが、リョーイチは『御』の椅子を欲している。
あいつは、日本の大学でボスをしていれば良いんだ。
縛り付けてやるよ。
これで、『御』の椅子は私のモノだ。
そして……、後は、あの老いぼれだけだ。