甥っ子コンプレックス

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あまり収穫のないまま帰らないといけないのか。

それなら、せめてコイツを連れて帰ろう。

しかし、コイツは隙が有りそうで無い。

リョーイチに話を持ちかけると、あいつは言ってきた。

「ボスは昔から頑固だから、説得させるのは骨が折れる仕事だよ。でも筋を通せば、分かる人間だ」

 

だからリョーイチに説得役を任せていたのに、全然と言っていいほど歯が立たない。

仕方ない、気を失わせるか。

ここには薬関係のモノが置いてない。殴るかと思い狙ってると、隙がないので出来ない。

銃尻で殴ろうと銃を取り出したら、彼は言ってきた。

「そんな物を、ここで見せないで下さい」

「誰に、何を言ってるんだ?」

 

そいつは振り向いてくる。

「ミスター、貴方です。クリニックとはいえ、ここは病院です。病院に、ソレは必要ありません」

この私に正論を言い放ってくる気か。それはウィルだけで十分だ。そう思うと、私は蹴ってやる。当たったと思ってたら、当たらなかった。二度、三度と蹴ったが、空を蹴るだけだ。

(なんでだ?)

リョーイチが溜息を吐いて言ってくる。

「マルク、無理だよ。ボスは合気道と少林寺の師範をしていた。気配には敏感だよ」

くそぅ、くそったれ!

私はクリニックボスに言ってやった。

「私はドイツに戻る。お前も来るんだ!」

「嫌です。私は、ここから離れない」

 

カチャと撃鉄を引き照準を合わす。

一瞬だけど、身体が微かに震えたのが見て取れた。

リョーイチが庇おうとしてくるが無視だ。

「最後通達だ。一緒に来い」

「どうしてですか?」

「お前に興味を持ってる人がドイツに居る。その人に会ってもらう」

「それなら、その人に連絡してください。こう見えて、私は忙しいんです」

腹が立った。

「ごたくは、そこまでにしろ!」

「マルク、撃つな! やめろ!」

リョーイチが叫んでるが、それも無視だ。

スカッ……。

銃尻は、空を殴る。

「逃げるなっ!!」

「痛いのは嫌です。それに私は何もしていません」

腹に当てるつもりで拳を繰り出したり、足で蹴ったりするが当たらない。

蹴る度に空を蹴ってしまう。

 

「くそったれ!」

ワルサーを麻酔銃に替えてレベルをMAXにして撃ってやる。

クリニックボスは避けてくれるが、その内の一発が掠りそうで掠らなかった。

しかもリョーイチを人質に取ってるつもりか。

私にとってリョーイチは邪魔者だから、別に死んでも構わない。

そのリョーイチが何かを言ってる。

「ボスッ! 人を盾にする癖は直ってないなっ」

「だって、側に居るのは、学長だけ……」

 

くそっ、こうなったら腹でも頭でも、どこでも構わんっ。

そう思ったら手に痺れがきて、カランッと麻酔銃を落としてしまった。

横目で見ると、誰かが銃を向けている。

今のは、コイツが撃ったのか。

……私に?

邪魔する奴は、誰だろうと撃つ!

ワルサーを懐から取り出して構える。

それを見たリョーイチは叫んでる。

「マルク、やめろっ! マサッ、逃げろ!」

 

リョーイチの叫び声はイライラする。

すると、クリニックボスは、この邪魔者に言い放った。

「マサッ! ジェットを押さえろっ」

 

ジェットだと?

冗談じゃない、ジェットを押さえられてたまるもんか。

カチッ、と耳の後ろにあるスイッチを入れてジェットのコクピットに告げる。

「クルー。ジェットを空に上げろ。今すぐだっ!」

そう言うと、今度はリョーイチだ。

「リョーイチ。日本に帰りたければ、ソイツをジェットに乗せろ」

バラバラバラッ……と、ジェットは空に上がっていく。

 

「来いっ!」

銃を撃つとクリニック・ボスは倒れた。

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