どこに隠れていたのか、もう一匹のネズミが動き出した。
しかも私の目の前で耳打ちをしている。
ムカつく。
そう思っていたら撃っていた。
ドンッ!
パリンッ……。
2人が避けてくれたせいで、何かが割れた音がする。
「ほう。よく避けたな」
しかも、そのネズミはエサとして捕まえたクリニックボスを抱きかかえている。
「ぅ、っ……」
英語に切り返す事も無く、ドイツ語で言っていた。
「貴様っ、そいつを離せ!」
そいつはドイツ語で返してくる。
「はっ、誰が離すもんか。せっかく穏便に事を済まそうと思ってたのに」
「泥棒ネズミが」
ゴリッと頭を叩かれたのか、そんな感じがしたので振り向く。
さっきまで対峙していた男が、自分のワルサーの銃尻で頭部を叩いたみたいだ。そいつを睨んでやる。
「どっちが泥棒だ? ボスに手を出し、拉致したのは誰だ?」
私は、その男を睨んだ。
「貴様っ。よくも、この私に……」
ドンッ、ドンッ!!
「ぁ、ぁ……」
私が撃つ度に、何かが割れる音がする。
パリーン、パリンッ……。
「ぅ……、ふ……、っ」
私は、自分のジェットの装飾品が壊れるよりも、目の前に居るネズミが二匹とも避けるのでイラついていた。
「このネズミ共が……、クタバレッ!」
そう言うと、ワルサーを捨て散弾の方を手にした。
ババババババッ……!!
目の前の2匹のネズミは身を伏せた。
そのうちの1匹の身体が自分に覆い被さってきたクリニック・ボスは、一瞬だが、呻き声が止まった。
「っ、ぅ……」
クリニック・ボスに被さっている奴を引き剥がそうとしていた私は近寄っていた。
そして、クリニック・ボスを引き離し、自分の手元に抱きかかえた直後だった。
「ジョーーーーッ!!」
耳に響いた。
自分の耳元で叫ばれたので蹲っていた。
他の2匹のネズミも、同じ様に蹲っているが、2人とも内心は同じ思いだった。
(ふんっだ、この爺……。ざまあみろ!)と。
その2人はジェットの尾の方から、こっちに来ようとしている数人の気配を感じ取っていた。
クリニック・ボスは呻いている。
ネズミ2匹が床を這って近づき、ボスを抱きかかえようとしているが、その腕から逃れようと抵抗していた。
「ひ、ろ……」
その時、大きな声が聞こえてきた。
「マルクッ! お前は、許さんっ」
この声は、ヒロなのか。
すると顎下から蹴り上げられ、天井に頭をぶつけてしまった。