お姉様。
大好きで親愛なるマドリーヌ姉様。
やっとだ。
やっと、これで貴女に会える。
シェリーにも会える。
ごめん、待たせてしまったね。
ヒロ。
私の大事なヒロ。
完成したばかりの音楽ホールで、一番最初にリサイタルをして聴かせて貰った。
あの時が、本当に幸せだった。
「今度はエドとのダブル演奏を聴かせてくれ」
そう言ったのに、その願いは叶う事はなかった。
それにね、あの書類にサインして欲しかったんだ。
『 Dear ヒロト=ヴィオリーネ・フォン・パトリッシュ=フクヤマ
これからは、
マルク=ボルディーヌ・フォン・パトリッシュと共に、
2人でドイツで生きる事を誓います。
たくさん話をして、たくさん旅行して、たくさん演奏も聴かせてね。
楽しみにしてるよ。
(マルク)
マルク=ボルディーヌ・フォン・パトリッシュ
(ヒロ)
』
あの空欄にヒロのサインが欲しかったんだ。
せっかく会えたのに、最後は睨みあいだったけど、私は嬉しかったんだよ。
会えて、本当に嬉しかったんだ。
私は、決してヒロの遺産目当てでは無い。
ただ、昔と同じ様に懐いて欲しかったんだ。
それだけなんだ。
『御』になりたいという夢を持った事もあった。
だけど、それにはヒロが必要なんだ。
私が『御』になって、ヒロは参謀役になってもいい。それか、ヒロに『御』になってもらって、私と一緒にフォン・パトリッシュを栄えさせるという手もある。
それが、急にデータにアクセス出来なくて焦っていた。
寂しかったんだ。
息子や孫ではなく、ヒロ。
君だけなんだ。
私の大事なヒロ。
エドの所に居るなら、居ると言って欲しかったな。
それなら、こんなに苦労しなくても良かったのに。
でも、居場所は分かった。
これで安心できる。
今度は空の上から見守ってるよ。
また、ドイツにおいで。
待ってるよ。
エド。
それまでヒロの事をよろしく。