チャーチから屋敷に手を繋いだまま帰る。
ヒロの手は小さく温かった。
その手を離したくないという思いで握ったまま門の入り口で立ち止まる。
「ところでヒロ」
「は、はいっ」
「門も閉まってド―ベルマンも放されているこの夜に、どうやって外に出れたんだ?」
「普通に頭を撫でてたら寝てくれて、そのまま出て来れました」
本当だろうか。
信じられない思いで門を開け中に入ると、人の気配に気が付いたド―ベルマンは頭を起こして振り向いてきた。威嚇してるのに気が付かないのか、いつの間にか私の手から離れたヒロは彼等に近付いていく。
「ただいま。良い子にしてた? 今日はマルクと一緒だよ。じゃね、おやすみ」
と言いながら、ド―ベルマンの頭を一匹ずつ撫でている。
信じられない事に、ド―ベルマンは大人しく撫でられ気持ちよさそうに目を細めている。
私とヒロに威嚇する事無く道を譲ってくれた。
思わず溜息が出ていた。
「ったく、ヒロは犬使いか……」
「なに、それ?」
屋敷内に入ると「お休みなさい」と礼儀正しく挨拶をしてくれるが、新たな問題に気が付いた。
「ヒロ、寝る前においで」
「何処にですか?」
腕を強く引っ張って歩かせ、私の書斎に連れて入り右奥の部屋に押し込んでやる。
「こっちは駄目だって言われてた部屋なのに……」
部屋に押し入れガチャンッとドアを閉めると、ヒロの慌てた声が聞こえてきた。
「マルク?」
「今迄何度も外に出ていたようだが許しはしない。そこで一日を過ごすんだな」
「マルク、あの」
「もう少しで24時になるけど、明日の23時になったら出してやる」
「待ってよっ」
「誰にも言わずに外出したのだろう? 言ってれば良かったのにな」
「あ……」
「じゃ、お休み」
明日の夜23時までの23時間弱、どんなになっているか興味深いな。
ヒロ。
いくら君でも、一度に50匹のド―ベルマンを相手に出来ない筈だ。
己を知れ。
自由気ままに出入りしてくれて、これが私でなく他の人物だったら説教だけで済ますだろうが私は違うからな。
しかし、今夜のド―ベルマンは使い物にならないな。
門からこっちに居た10匹は残念だが消えて貰おう。