同じ人を好きになったアイツと俺

11

東京に戻ってきて数日後、打ち合わせのため出版社に行くと、日下さんはロングヘアを一つに纏めている。

「日下さん、お世話になっております」

そう声を掛けると顔を上げて笑顔を見せてくれた。

「修先生も大変ね」

「なにがですか?」

日下さんは笑い出した。

「押しが強いのか弱いのか分からないお兄さんがいて困ることない?」

「んー……、ものによりますけどね」

「ものによる、か。ったく、あの坊やは……」

編集長いいですかと声が掛かり日下さんは席を立ったので、その後ろ姿を見送っていたら気がついた。

いつもの黒いゴムではなく、カラフルなゴムをしている。

そうか。真は大阪プレゼントを渡したのか。

日下さん、よく似合っているよ。

そんなにも経たないうちに戻ってきた出版社の編集長、日下さんに声を掛けていた。

「よく似合っていますね」

「何が?」

「カラフルなゴム。彼氏からのプレゼントですか?」

「大阪に行ったからって土産と一緒にくれたの。知ってるよね?」

「一緒に行ったけれど、何を買ったのかは知りませんよ」

「プレゼントされたの初めてで。嬉しかったの」

「良かったですね。」

打ち合わせお願いしますと言いたかったのだけど、遮られてしまった。

「あの子はモデルしていたからわかるけれど、修先生は何をしていたの?」

「何って?」

「これを買っている間、修先生は何をされていたのですか?」

「ああ、そう言う意味……」

すると、日下さんはとんでもないことを言ってきた。

「大阪のような賑やかな場所で、アクセサリーとは言え、女性物売り場。修先生は一緒に居て居心地悪かったでしょうに。思わなかった?」

「思いましたよ。もうジロジロ見られるのが恥ずかしくて、しまいには改札口近くの喫茶店に逃げこみました。あいつは恥ずかしくないのですかねぇ……」

日下さんはクスクスと笑いながら言ってくれる。

「モデルだったからねえ。煌びやかで賑やかな場所はお手の物なんじゃない」

うへぇ……、俺には無理だ。そう思うと降参の意を示して両手を軽く挙げた。

「打ち合わせ、お願いします」

「はーい」

俺のデビューから、ずっと日下さんが担当してくれている。その日下さんが編集長になってからも担当を外れることはなかった。

なにしろ、こう言ってくれたからだ。

「修先生を見つけたのは私ですからね。くっついていきますよ」

「はは……。よろしくお願いします」

社交辞令だと分かっていても嬉しく、その言葉に俺は安心していた。

日下さん、あなたが好きです。

それが、いつの間にか真に取られていた。いや、俺がアドバイスして2人のキューピットになっていた。

にほんブログ村 ベンチャーブログ 女性起業家へ
にほんブログ村

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。